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2016/10/01

「正式なアルバム・デビューを前に、どうしても踏んでおきたかったステップ」 新鋭ラッパーの最新ミックステープ『Jeffery』(Album Review)

 アトランタ出身のラッパー/シンガーであるヤング・サグは、同郷グッチ・メインのフックアップを足がかりに活躍の機会を増やしてきたけれども、近年では南部ヒップホップ・シーンだけには留まらず、ジェイミー・XX『In Color』、カニエ・ウェスト『The Life of Pablo』、チャンス・ザ・ラッパー『Coloring Book』、DJスネイク『Encore』といったふうに、ジャンルの壁を越えて数々の話題作にも顔を覗かせてきた。

 300 Entertainmentからのデビュー・アルバム『Hy!£UN35』も待たれるところだが、ヤング・サグは大量のミックステープ作をリリースしていることでも話題を集めており、2016年に入って3作目となるミックステープ『Jeffery』は、9月17日付のThe Billboard 200で初登場8位を記録。前作『Slime Season 3』に続いてトップ10入りを果たした。

 ドレスを纏ったヤング・サグのアートワークも衝撃的な『Jeffery』だが、そもそもワーキング・タイトルは『No, My Name Is Jeffery』とされており、ヤング・サグとしてキャリアを築くよりも以前の、本名ジェフリー・ウィリアムズを物語るための濃厚なコンセプト作となっている。さしずめ、ヤング・サグの『エピソード0』と言ったところだろうか。

 スターダムにのし上がるよりも前の、抜き差しならないサグ・ライフを回想する『Jeffery』は、そのヴォーカルの語り口もトラップ・チューンの感触も、切実でエモーショナルだ。楽曲にはそれぞれ「Wyclef Jean」や「Swizz Beats」、「Kanye West」といったヒップホップ・レジェンドたちや、ハングリーなボクシング王者「Floyd Mayweather」らの名前がタイトルに用いられているところからしても、若きジェフリーが追いかけたヒーローたちの背中が浮かび上がってくる。

 ダブ/トロピカル風の情緒がストーリーテリングを増幅させる「Wyclef Jean」で幕を開ける本作。一方で本家ワイクリフ・ジョンは最終トラックの「Kanye West」に参加し、苦い悲恋の情景描写を援護している。また、同郷のTM88が手がけた「Future Swag」や、ソリッドなダブステップ曲となった「RiRi」といった中盤の並びは、いずれもヤング・サグらしい斬新でクロスオーヴァーな音楽性の在り方を強調していて素晴らしい。

 過去の物語を紐解くことでエモーションを獲得しつつ、音楽的には未来に向かっている。そんな難易度の高い作品として完成した『Jeffery』は、ヤング・サグが正式なアルバム・デビューを前に、どうしても踏んでおきたかったステップなのかも知れない。トラヴィス・スコットやクエヴォとコラボしたシングル「Pick Up The Phone」もボーナスとして収録した、充実の内容だ。〈Text:小池宏和〉

◎リリース情報
『Jeffery』
2016/8/26 RELEASE
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/jeffery/id1146718343

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