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2014/10/04

チキパが和泉元彌にインタビュー実施、鈴木「かっこいい…」から「ワンちゃんみたい」

 NYにて、全国ツアーのファイナル公演を10月に控えるCheeky Paradeのメンバーが「日本の文化・著名人」に触れて海外進出への極意を学ぶという企画が実施されているが、メンバーからリーダーの関根優那・渡辺亜紗美・鈴木真梨耶の3名が、和泉元彌にインタビューを実施した。

 今回のお相手は、600年続く日本の伝統芸能「狂言」の和泉流二十世宗家である和泉元彌。彼の狂言への想いに鈴木真梨耶も「かっこいい…。」と惚れ惚れした様子だったが、ひたむきさに「ワンちゃんみたいですね!」とコメントする場面も。

 以下はインタビュー全文。

関根「約600続く日本文化を伝承する立場について、考え、想いをお聞かせください。」

和泉「私は21歳で宗家を継承しました。」

関根「若い!私達と同じくらいの年齢ですね。」

和泉「当然凄いプレッシャーでしたが、当時は、自分を若いなんて思ってなかったんです。なぜ若いと思わずにいられたかと言うと、和泉流宗家は伝統的に原則として世襲で受け継がれてきました。生まれた時から運命は決まっていましたし、その為に宗家としての修行は1歳半から始まり、4歳で初舞台を踏みました。1歳半の子供は、周りを見て、いろんな事を真似して覚えていく時期じゃないですか。人間としてゼロから始まるときに狂言の道を歩み始めるので、人間として成長がイコール狂言師・宗家としての成長だったからでしょう。そして何より、先代宗家からの指名が自身となりました。中学・高校生の頃からインタビューを受けることがありました。変わらないことを守り、演じるからこその伝統芸能の世界にいて“自分を表現したいと思いませんか?”という質問を受けたことがあって…そう聞かれるということは、狂言は、“自分を表現できない”と思われているということですよね。確かに昔からの約束事を守り、変わらない型を伝えていくものなので、個性を出そう!出そう!!とは思っていないんですけれども、出そうと思っていないのに出てしまうのが個性です。そこが狂言の面白い所でもあり、怖い所でもある。そこで、一番に心掛けているのは、自分を表現しようとするよりも真っ白、真っ直ぐな気持ちをもって演じ、600年の変わらない心を感じて頂こう、私を通じて600年続く伝統を見て頂けるようにと思って舞台に立っています。

真梨耶「かっこいい…。」

渡辺「1歳半からお稽古を始めて、辛かったり、辞めたかったりって思ったことはありましたか?」

和泉「辛いことは…ほぼ毎日です!(笑)師匠である父からの教えの原則が“3回繰り返すうちに覚えなさい”なんですね。前の日にやったことは、当然、次の日には出来てなくてはいけない。昔ながらの<口伝>というのが、唯一の稽古方法です。単純ですが厳しい伝承方法です。父はどちらかというと不親切な師匠で(笑)。ただ、それは何故かというと簡単に与えられたものは、簡単に手放してしまう。汗水流して体得したものだからこそ心身に残るという教えでした。目の前で師匠である宗家が本番さながらに演じてくれるのですから、それ以上の修練は無いですよ。“芸はぬすむもの”!自分が気付いたもの・掴んだものは芸の財産として持っていける。前日に覚えたものは出来て当たり前!毎日、初めての事、できない事をできるものにしていく訳ですから、楽ではないですよ。父はスパルタでしたから扇が飛んでくる、声が大きくなるのは当たり前でした。泣きながら稽古もしました。そうすると「いつまでも泣いてろ。声が枯れるだけだ。」と泣くことすら許されない。出来て終わるしか無いんです。どうしてそんなに辛い稽古でも耐えられたかというと、師匠である父が目の前で見せてくれる狂言がとても面白かったし、格好良かったですね。憧れの存在だったので、あれが出来るようになるなら!という思いでどんなに大変でも頑張れました。できない事ができるようになる達成感や充実感を日々実感していました。だから、稽古を嫌だと思った事はありません。“よし”の一言で一日の稽古が終わるんですね。稽古中に褒められる事は基本的にないのですが、全てが詰まっている“よし”の一言がとても重くて、聞くとすごく嬉しくて…単純ですね。」

真梨耶「なんか、ワンちゃんみたいですね!」

和泉「そうそう(笑)本当に『パブロフの犬』みたいに“よし”の一言を聞くために頑張るみたいなね(笑)」

関根「褒められないっていうのは…、すごいね。」

和泉「父が亡くなるまで4歳の初舞台から17年の間、何千という舞台に父と一緒に立ったのですが、褒められたのって、両手の数で足りるんじゃないかな。プロは100%出来て当たり前。弟子は、120%、150%の姿を舞台で返し、師匠を感心させなきゃいけないという考えでしたから。」

チキパ一同「え~~~~~~。すごい…」

和泉「そんなこと言いながら今、自分の子供達にも同じことをやってますね(笑)」

関根「同じやり方でご指導なさってるんですね。」

和泉「そうですね。(笑)」

関根「心を鬼にして…。」

和泉「そうです。まさに心を鬼にして。可愛くなければ叱らないですよ。愛情の裏返しは憎しみではなく無関心ってよく言いますでしょう。本当に関心が無い人には注意もしませんよね。師匠が優しくたって、舞台に立って何もできない人間しか育たないなら何の意味もない。いつか僕がいなくなっても、伝統を受け継ぎ、受け渡していくプレッシャーにも耐えられる人間に育てなければならないですから。

渡辺「お子さんに稽古で厳しくされて、稽古が終わった後はどういう感じですか?」

和泉「僕は…普通に優しくしてます(笑)。父は厳しかったですね。僕は父が亡くなるまでずっと敬語で話していました。師匠と父との割合は9:1くらいに感じてましたね。父自身は「95%師匠で、5%父としていられればいい」なんて周りの方に話してたこともあったそうですが。そこに並々ならぬ父の覚悟を感じました。私の父は一切家事・子供の世話はしなかったんですけど、僕はお風呂担当ですね。」

チキパ一同「偉いですね!(笑)」

和泉「めちゃくちゃ厳しい稽古をした後、一日の終わりにお風呂に入れるんですけど、子供は厳しさと優しさ、愛情っていうのをしっかりと理解してくれるんだなと日々感じています。」

関根「海外から狂言を見に来られるお客さんもいらっしゃるかと思いますが私たち、10 月にNYのタイムズスクエアでLIVEを行う予定です!海外のお客さんに“ウケル”受け入れてもらえるコツがあれば教えてください!

和泉「海外からお客さんが来て下さることはもちろんですけど、私ども和泉流宗家は1988年以来、毎年、海外に行っていて、13ヶ国40都市ほどで公演しているんですね。海外に行くから、現代人に見せるからといって<狂言>という伝統芸能を伝えるために単純に英語にしたり、現代語訳にはしません。海外公演でも600年前のまま演じます。40分位じっくりと時間をかけて約束事などを解説をすると、その後の上演はそのままでちゃんと伝わります。狂言は人間の持っている表現力をフルに活かしているので伝わるのだと思います。変えないものは何なのかというのをしっかり理解して臨むことは非常に大事だと思います。いつ、どこの、誰に見せるときでも一所懸命の「熱量」は変えないこと。熱は伝わりますから。言葉が違っても、文化が違っても、伝えたいものをちゃんと持っている人の熱や心は必ず伝わります。エンタテインメントって説明できなくてもいいものだと思うんです。ここが良かったから面白かったよね!ではなくて、『何かわからなかったけど、とにかくすごかったよね!』『感動した!』と思ってもらえるかどうかが、一つ大切な事だと思います。背伸びをしても出来ないものは出来ないですからね。もちろん出来るようにする努力は続けなければいけないけどね!」

真梨耶「1ついいですか!海外公演で披露できる、必殺技を和泉さんからもらいたいです!」

和泉「切り込み隊長ですね(笑)半年あれば狂言稽古したらどうですかと言いたいくらいですけどね(笑)絶対海外の方には出来ないですからね。必殺技・・・、マイク使わずに生の声を届けるというのでも熱を伝えることは出来るんじゃないでしょうか。あ!あと着物で登場するとか・・・。」

関根「実は次の衣装は和風な浮世絵の入った着物をイメージした衣装なんです!」

和泉「いいですね!何か、自分たちは日本から来たんだぞ!っていう拠り所があるといいですよね。その衣装も強い味方になりそうですね。着物って、決まった形の中に色や柄で日本独特の季節感などを表現しているじゃないですか。それってすごく日本らしいと思うんです。狂言の世界でも、なんで型を変えないかというと、目には見えない「心」を伝えるためなんです。その型と共に受け継いだ心を各々が咀嚼し、膨らまして、型から溢れ出す程の心を作り出すことが大事。その溢れた心が個性になるのだと思います。是非!“らしさを忘れず”日本の心をアメリカに届けていただければと思います。この『日本の心』を必殺技に変えていただければと思います(笑)。」

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