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<コラム>国際ショーケース・フェスティバル【Music Lane Festival Okinawa 2025】に要注目

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Text: 関根直樹

Music Lane=新しい音楽や文化のムーブメントは、メインストリート以外から生まれる

 【Music Lane Festival Okinawa 2025】が2025年1月17日(金)から1月19日(日)の3日間、沖縄市(コザ)で行われる。【Music Lane Festival Okinawa】は、主にアジア各都市から音楽関係者を招き、アーティストとのマッチングを行い、また沖縄とアジアの音楽ネットワークの構築、沖縄市(コザ)発の新たな音楽産業の創出などを目指す国際ショーケース・フェスティバルである。アーティスト同士が共感すれば、楽曲制作やライブパフォーマンスの場で自然とコラボレーションが始まる。アジアの音楽文化交流や発展に寄与することが目的だが、日本の音楽コンテンツの海外ビジネス展開などにもつながる可能性があるという意味でも注目のフェスティバルだ。

 筆者は一昨年前の【Music Lane Festival Okinawa 2023】に参加したが、初めて会った関係者たちがアルコールを飲みながらカジュアルトークに興じるオープニングパーティー、関係者やアーティストに向けたビジネスセミナーのほか、アーティストが関係者に自分を売り込める1on1ミーティング【Trans Asia Music Meeting】も併催され、前夜祭含め3日間で盛りだくさんの内容だった。

 【Music Lane Festival Okinawa】は2016年に那覇市の桜坂劇場を中心に始まった関係者向けのカンファレンスとショーケースである【Trans Asia Music Meeting】に起源がある。

 Trans Asia Music Meetingを創設した野田隆司氏は、20年から沖縄市(コザ)のミュージックタウン音市場の館長になったことを機に、沖縄市で本格的な国際ショーケース・フェスティバルの開催を計画。2023年2月に【Music Lane Festival Okinawa】をスタートさせた。Laneはメインストリートではない裏通りのこと。常に新しい音楽や文化のムーブメントはそうした場所から始まるという意思が込められた。

 野田氏は、【Trans Asia Music Meeting】から一貫して、沖縄とアジアの音楽ネットワーク構築を進めてきた。欧米には、米国で開催されるテクノロジーと文化の祭典【SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)】や、フランスで開催される国際音楽見本市の【MIDEM(ミデム)】のような音楽カンファレンスとショーケースがある。【Music Lane Festival Okinawa】は沖縄とアジアの音楽文化交流のハブ、そしてショーケース・フェスティバルとして、その役割を果たしている。

 【Music Lane Festival Okinawa】ではアーティストのほとんどがレーベルや事務所に属さないインディペンデントアーティストである。沖縄までの渡航・宿泊費を全て自分でまかない、パーティーからミーティングやセミナーにいたる全てのセッションに参加する。

 業界用語でいうアシ(渡航費)とマクラ(宿泊費)は自己負担という条件にも関わらず、【Music Lane Festival Okinawa 2023】では国内40組、海外66組の応募があり、うち43組が出演している。この数字から国内外アーティストの関心度の高さが伺える。

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多くのアーティストにとって、海外のフェスに出演するきっかけにも

 【Music Lane Festival Okinawa 2025】では、インディペンデントアーティストを中心にサポートする日本最大級の配信デジタルディストリビューターであるTuneCore Japanが協賛社として参加している。その告知効果もあって、国内から300組以上の応募があったという。また、海外もアジアだけでなく、アフリカ・ヨーロッパ・オセアニア・南米など、文字通り世界中から約70組の応募があり、応募総数は約400組を数えるまでに成長している。野田氏は「そうした熱量の高さに、国内のアーティストは海外マーケットを目指し、海外アーティストは日本やアジアのマーケットの入口を探しているということを改めて実感しました」と語っている。【Music Lane Festival Okinawa 2025】では国内から34組、海外から25組、計59組が出演予定だ。アーティストセレクションについては、4人の外部審査員による審査と、主催側のブッキングで決めていったという。楽曲のクオリティ、ライブパフォーマンス、ショーケース・フェスティバルへの理解度、ジャンルや地域、ジェンダーバランスなどが加味された。ショーケースは、コザにある6つの会場で開催、数十人で満杯になる会場から1100人動員可能なライブハウスまで、音楽ジャンルやバンドの編成などに応じて振り分けられている。




Music Lane Festival Okinawa 2025 出演アーティストの一部

 そしてDelegatesと呼ばれる音楽フェスティバルのオーガナイザー、コンサートプロモーター、レーベル担当者、メディアなど日本や海外からの業界関係者も数を増し、中国、アメリカ、インドなど12の国・地域から22名が参加予定。カメルーンのアーティストやモンゴルの業界関係者を招聘できるのも、主催者である野田氏の幅広いネットワークならではといえる。

 会期中はショーケースに出演するバンドがひたすらフライヤーやステッカーを配布する光景に出くわす。アーティストがフライヤーを来場者に配り、自分を売り込むのだ。【Music Lane Festival Okinawa】ではショーケースで演奏するだけでなく、アーティストが積極的にミーティングやカンファレンスに参加してコミュニケーションを図ることが大切だと野田氏は考えている。

 「基本、自分たちはこうした場をつくって、できるだけうまくマッチングできるようにすることを考えています。そのためには、アーティスト自身が積極的なコミュニケーションを図ることが第一です。Music Lane Festival Okinawa の前身のTrans Asia Music Meetingを始めてから、これまでも多くのアーティストが海外のフェスに出演するきっかけをつかんできました。韓国のバンドが、タイのフェスに招かれたこともあります。沖縄のバンドを送り出したいという気持ちは強いですが、色々な場所からコザに集まってもらって、ここから新たなつながりをつかんでもらえればいいと考えています」と野田氏。

 【Music Lane Festival Okinawa 2025】ではまた、企画・協力にStudio ENTREとLABの2社が新たに加わったことで、プログラムの充実やデジタルと音楽の連携、広報発信が強化されている。まずStudio ENTREの山口哲一氏の協力のもと、新たに海外アーティストと日本人クリエイターによるコライト・キャンプを実施する。これは海外からの参加アーティストの楽曲を日本でリリースすることを前提としたプログラムで、フェスの期間中に基本的な方向性を決めて、その後データをやり取りしながら完成させていく予定。そしてLABの脇田敬氏によるデジタルマーケティング面のサポートにより、フェス会期中もリアルタイムで情報発信が行われ、幾つかの会場からはYouTube Liveで生配信も行われる。さらに、デジタルと音楽の融合という目的のもと、一般社団法人沖縄スタートアップ支援協会 / KOZAROCKS実行委員会など、コザを拠点にスタートアップを行うチームとのコラボレーションも予定されている。カンファレンスでは、Festival Life編集長 津田昌太朗氏による「アジアフェスティバルの最新地図」、Google佐々木舞氏がモデレーターを務めアジアの音楽業界におけるジェンダーギャップを語る「Woman in Music in Asia」、海外のゲストスピーカーを招いた、「ブッキングエージェントに訊く!ファンが掴めるフェスの選び方」など日本の音楽業界人にとって興味津々の11のテーマで開催される、充実度の高い内容となっている。

 そして今回は一般社団法人日本音楽事業者協会、日本音楽出版社協会、一般社団法人Independent Music Coalition, 一般財団法人日本音楽産業・文化振興財団という日本の音楽業界4団体が後援しており、【Music Lane Festival Okinawa】に対する日本の音楽業界関係者の認知率や注目度は昨年と比べ確実に高まっていると考えられる。

 今回は、すべてのショーケース、カンファレンス、ネットワーキングのプログラムに参加できる、ビジネスパスも販売されている。これは、日本の音楽業界関係者とアジアの音楽のネットワークとのつながりをより具体的なものにしていくための施策でもある。上記4団体の加盟社には、割引コードも発行されている。



Music Lane Festival Okinawaの創設者であり、フェスティバルの中心となるミュージックタウン音市場の館長である野田氏(左)

 TuneCore Japanによる協賛、Studio ENTRE、(株)LABなどによる企画・協力、一般社団法人沖縄スタートアップ支援協会、KOZAROCKS実行委員会、Festival Life等による協力、音楽業界各団体による後援により、企画から内容、構成、運営まですべての面でパワーアップしたMusic Lane Festival Okinawa 2025。「ショーケース・フェスティバルというと、アーティストとDelegatesの結びつきということばかりに目が行きますが、アーティスト同士、業界関係者同士がつながる場でもあります。そうした中から新たな動きが始まるきっかけになればいいと思います」と野田氏はPRコメントを残した。

 日本から海外へ、そして海外から日本へ、今回は何組のアーティストが飛翔、飛来するのかがとても楽しみである。アジアアーティストの日本での音楽活動や日本人アーティストの海外での展開に興味を持たれた方は、ぜひ足を運んでほしい。

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