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<インタビュー>ホロライブEnglishのハコス・ベールズが語る、コンセプチュアルな1stアルバムで得た音楽への自信

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Interview:Takuto Ueda

  ホロライブEnglish所属のVTuber、ハコス・ベールズが1stフルアルバム『ZODIAC』をリリースした。十二支をテーマにした本作は、ロックやバラード、レゲトンからEDMまで幅広い音楽に挑戦した楽曲が収録されており、ホロライブの“カオス担当”を名乗る彼女の様々な一面を覗かせる仕上がりに。また、戌神ころね、 兎田ぺこら、角巻わため、といった先輩VTuberたちのゲスト参加など、リスナーを飽きさせないギミックが随所に凝らされている。

 自分の人生を自由に楽しもう――もともと自己表現に自信がなかったという彼女は、2021年にVTuberとしてデビューし、大切なリスナーたちに支えられながら成長し、やがて本格的に音楽活動を開始。そのひとつの集大成ともいえるアルバム『ZODIAC』について、話を聞いた。

人生、楽しくなければ意味がない

――まずはVTuberとして活動を始めたきっかけを教えてください。

ハコス:もともとVTuberはそこまで詳しくなかったんですけど、周りに何人かこういう活動をしている友達がいて、たまたまホロライブのことをネットで調べていたらオーディションを開いていたんです。それで私も受けてみようかなと思って応募したのがきっかけでした。

――ベールズさんはオーストラリア在住ですよね。日本語はどうやって学んたのでしょう?

ハコス:最初は他のタレントと同じように独学でした。アニメを見たりゲームをしたり。その後、学校で何年か学んだんです。

――その当時から音楽活動への興味もあった?

ハコス:幼い頃から音楽はずっと聴いていて、特に自分の感情を表現するような曲が好きでした。でも、作ったり歌ったりすることには自信がなかったんです。昔から自分の声も好きではなくて。ホロライブに入ってからはリスナーさんたちが応援してくれるので、そのおかげで自信が生まれて音楽をやってみたいと思うようになりましたね。

――具体的にはどんな音楽が好きだったんですか?

ハコス:J-POPやK-POPはずっと好きでした。家族の影響で聴くようになったのが浜崎あゆみさんで、当時は日本語が分からなかったんですけど、曲から感情が伝わってきていいなと思ったんです。あとはダンスも好きなので、K-POPの激しい振り付けの曲とかもよく聴きます。

――ダンスを始めたのはいつ頃?

ハコス:それも最初は独学で始めて、途中からレッスンに通うようになりました。今思えば昔から自分のことを表現するのが好きだったのかもしれないです。

――自分のことを知ってほしいという気持ちが強い?

ハコス:自分のことを知ってほしいというより、パッションをみんなと共有したいという気持ちですかね。「一緒に楽しい時間を過ごしたい! 一緒に笑いたい!」みたいな感じです。

――これまでの活動で特に印象に残っていることをありますか?

ハコス:ホロライブに入る前からよく見ていた、憧れのタレントさんたちとコラボできたことです。

――難しいかもしれませんが、特に憧れている先輩を挙げるとしたら?

ハコス:大空スバルさんはめちゃくちゃ憧れています。ツッコミが上手だったり、エンターテインメントで笑いをたくさん生み出してくれるところに憧れます。

――デビューから3年、そうした憧れの先輩に少しでも近づけているんじゃないかという実感、自信も生まれてきたのではないですか?

ハコス:自信は今後もうちょっと出てきたらいいなと思っているんですけど……。やっぱりデビューしたばかりの頃の気持ちがまだありますね。先輩たちとコラボで遊んだりするときも、やっぱりまだ光って見えます。

――デビュー当時、音楽活動についてはどんなヴィジョンを持っていましたか?

ハコス:正直、デビューした頃はそこまで音楽をやっていこうという目標を持っていたわけではないんです。なんとなく「作ってみようか」みたいな感じで最初のオリジナル曲「PLAY DICE!」を作らせていただいて、その後、みんなが応援してくれるようになったので「あ、自分はもっと音楽できるんだ」と思ってEP、アルバムと話が進んでいきました。

――2022年2月に公開された「Play Dice!」は、どんなことを表現したいと思いながら作った楽曲なんでしょうか?

ハコス:やっぱり一番最初の曲だったので、自分がどんなVTuberなのかを表現したかったんです。作詞作曲をしてくださったかめりあさんのことは、友達がきっかけで知ったんですけど、とても楽しい音楽を作る方だなと思っていて、自分の好きなタイプの曲を作っていただけるかもしれないと思ってお願いしました。それ以来、EPやアルバムにも参加してくださっていますが、いつもイメージ通りの曲を作ってくださるので本当に感謝しています。




【ORIGINAL MV】PLAY DICE! || HAKOS BAELZ


――「Play Dice!」はベールズさんも共同作詞としてクレジットされていますよね。作業はどんなふうに進めていったのでしょうか?

ハコス:まず最初にストーリーが欲しかったんです。自分の物語みたいな感じを出したくて。そういうリクエストを伝えて、かめりあさんがスターティングの歌詞を書いてくださって、その後、自分からもアイデアを出したり、お互いにフィードバックしたりして、最後まで作っていきました。

――まさしく自分自身の物語、人生を自由奔放に楽しむんだというポジティブなエネルギーに満ちた楽曲だと思います。

ハコス:テーマは“自由”でした。自分は毎回、音楽を作るときにテーマワードを決めるんです。それをプロデューサーさんたちに伝えて曲を作っていただいています。

――“自由”というのはベールズさんにとって大切なキーワードなんでしょうか?

ハコス:モットーですね。自分の人生、楽しくなければ意味がないと思います。そうやって生きれるように努力していますね。自由に生きたいという気持ちは昔から強かったんですけど、好きじゃないこと、楽しくないことをしていた時期もあって。でも、時間がもったいないなと思ったんです。

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強いテーマがあったほうがアルバムは作りやすい

――昨年7月にはEP『Pandæmonium』をリリース。何かテーマやコンセプトは決めていましたか?

ハコス:『Pandæmonium』ではカオスのいろんな面を表現しました。カオスってダークで危険なイメージがあるけど、同時にめちゃくちゃ元気で暴れるような感じもあるので、そういう一面も表したかったんです。

――具体的にどんな楽曲を収録したいと考えていましたか?

ハコス:4曲入りなんですけど、やっぱり最初の曲はダークで危険でサイコなイメージから激しい感じにしたいと思っていました。その次の曲はもうちょっとソフトな感じで、3曲目は自分が欲しかったダンス曲。それもけっこう激しめだったので、最後の4曲目は楽しくて可愛い感じにしました。かなりバランスを考えましたね。




【Pandæmonium】- Hakos Baelz 1st EP Trailer


――その後の音楽活動としては、12月に行われたeスポーツのイベント【Riot Games ONE 2023】にて、ホロライブ所属メンバーからなる限定ユニットに参加。『League of Legends』に登場するキャラクターで構成されたバーチャルポップグループ“K/DA”の楽曲をパフォーマンスされていました。

ハコス:去年の4月、K/DAの楽曲「POP/STARS」をカバーしていたんです。ファンからのリアクションもすごく良かったので、それが理由でメンバーに選んでもらえたのかもしれないです。まさか自分が【Riot Games ONE】でパフォーマンスできるとは思っていなかったので、とてもうれしかったです。

――特にダンス・パフォーマンスは圧巻でした。

ハコス:昔からK/DAの大ファンで、振り付けもよく見ていたので、今回ちゃんと練習して学ぶことができてよかったです。




Riot Games ONE Opening Act 「POP/STARS」「THE BADDEST」3D Live Performance


――では、本題のアルバムについて聞かせてください。最初にどんな構想をイメージしていましたか?

ハコス:自分がネズミのVTuberなので、十二支をテーマにしたアルバムが面白いんじゃないかという考えが一番最初にあったんです。個人的には強いテーマがあったほうがアルバムは作りやすいと思っていたので。それこそEPはカオスだったし。ひとつテーマがあれば、曲作りで悩んだり困ったりしたとき、そのテーマに戻ることができるじゃないですか。そのほうが作りやすいと思うんです。

――サウンドも詞の世界観も様々な本作。ハコスさんが自身の素に一番近いと思う曲を挙げるとしたら?

ハコス:やっぱりネズミの曲、1曲目の「R×R×R」ですね。最初からネズミ曲をリードにすることは決めていました。『Pandæmonium』でも自分のいろんな一面を表現してきたんですけど、「R×R×R」はEPにはなかったようなジャンルやメッセージにしたかったのでポップロックにしたんです。昔の自分の強い気持ちを込めた楽曲になっています。

――この曲はベールズさんが共同作詞としても参加しています。

ハコス:この曲は英語と日本語の両方使いたかったので、日本語はZAQさんを中心に作ってもらいつつ、Karenさんと相談しながら英語詞を作って、3人で一緒に作っていった感じです。

――ネズミ曲ということもあって、この曲でも「Play Dice!」や『Pandæmonium』に通じるカオスや自由が表現されているようにも感じます。

ハコス:そうですね。自分の曲はほとんど自由と関係があります。でも、どんな自由なのかは曲によって変わるし、「R×R×R」の場合は反抗している高校生みたいなイメージがありました。最初にZAQさんと話したときにそういうストーリーがあったので、完成した曲もイメージしていた通りになりました。

――パワフルなボーカルは聴き応えがあります。レコーディングで気をつけたところは?

ハコス:毎回、ZAQさんのチームと一緒にレコーディングするときはめちゃくちゃ楽しい経験になります。今回は自由に歌ってほしいと言われていて、早口が多かったので発音は特に気をつけた部分です。ところどころで噛んじゃったりして(笑)。




【ORIGINAL MV】R x R x R || HAKOS BAELZ


――ほかにもジャンル豊かな楽曲が収録されています。普段からいろんなタイプの音楽を聴くほうですか?

ハコス:自分のムードとか、その瞬間にどんな感情を感じたいかによって音楽を選びますね。例えば盛り上がりたいとき、逆に疲れていたり落ち込んでいるとき、まったく違う曲を選ぶと思います。このアルバムも同じようにいろんなジャンルの曲があれば、いろんな人に楽しんでもらえるんじゃないかと思いました。

――例えばこのアルバムで「ちょっと疲れてるな」と感じるときに聴きたい曲は?

ハコス:疲れているときは「818」「この世を照らすもの」「EIEN」を選ぶと思います。でも、どんな状況で疲れているかにもよりますね。疲れすぎていて何もしたくないときは「RIDE」もいいかなと思います。

――コラボ曲も満載です。「HIDE & SEEK ~なかよくケンカしな!~」は兎田ぺこらさんをフィーチャー。

ハコス:ぺこら先輩は自分と同じげっ歯類。いろんなコラボの機会があって、毎回なぜか楽しいイタズラとか競争みたいな流れになるので、そういう曲なら楽しいかなと思いました。あと、先輩たちとのコラボ曲はやっぱり先輩に似合う曲を作りたかったんです。イメージだけではなくて声や歌い方も似合いそうな曲。

――ベールズさんから見て、ぺこらさんはどんな先輩ですか?

ハコス:めちゃくちゃ尊敬する先輩です。配信するときのパッションとカリスマを尊敬しています。




【ORIGINAL MV】HIDE & SEEK ~なかよくケンカしな!~ || Hakos Baelz x Usada Pekora


――「COLOUR」は角巻わためさんとのコラボ曲。

ハコス:わため先輩のソフトだけどパワーが出てくる声がとても好きで。コラボでもそういう曲を歌いたいなと思いました。

――わためさんは先日、2ndライブ【わためぇ Night Fever!! in TOKYO GARDEN THEATER】を開催。ベールズさんはYouTubeで同時視聴配信をされていましたね。

ハコス:しました。最高でした。先輩たちがソロライブをやったり、パフォーマンスを見れる機会があったら、自分にとってもモチベーションになるので、いつも見させていただいています。

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いい曲を作れる自信

――そして「BITE! カム! BITE!」のコラボ相手は戌神ころねさん。

ハコス:これはエレクトロ・スウィングの曲を作りたかったんです。先輩の声に似合うと思っていたので。

――ころねさんの先輩としての印象は?

ハコス:体力が神みたいな先輩です。いつも配信を見るとすごく笑っているし、誰よりも配信を楽しんでいる先輩だと思っています。




【ORIGINAL MV】BITE! カム! BITE! || Hakos Baelz x Inugami Korone


――「La Roja」は軽快なレゲトン曲。

ハコス:スパニッシュ系のレゲトンの曲を作りたかったんですけど、あまりVTuberの曲で聴かないようなサウンドなので、最初はできるかどうか不安でした。でも、とてもいい感じになったと思います。Krisさんとレコーディングするときは、どんどん新しいアイデアが出てきて、その場で変わることが多いんです。とても楽しい経験になりました。

――具体的にはどんな部分が変わったのでしょう?

ハコス:クラップとか裏声のフェイクとかはレコーディングの日に思いついて入れました。

――続く「The Fight Song」は一気に雰囲気が変わって、すごく壮大な世界観になります。

ハコス:この曲は、檻の中の虎をイメージしました。この世界、この社会の中で鎖につながれて閉じ込められても、自分は自由に生きたいから戦う。そういうことを歌いたかったんです。歌い方もラフでワイルドな感じにしました。

――レコーディングが一番大変だった曲は?

ハコス:たぶん「GEKIRIN」「Ohayo-EST Gozai-MASTER ♡」かな。

――「GEKIRIN」はラップソングですね。

ハコス:はい。ラップが大変でした。言葉も難しいし、スピードも速かったので。でも、完成したものを聴いて、自分でもかっこういいなと思える曲になりました。

――「Ohayo-EST Gozai-MASTER ♡」はどんな部分が大変でしたか?

ハコス:まず歌詞が大変でした。朝に「おはよう」と言ってもらえるような、そういう元気がもらえる曲にしたくて。13曲の中ではちょっとイメージが弱かったんですけど、Krisさんがすごく手伝ってくれて、この曲もレコーディング中に変えたりしながら、楽しんで録音できました。

――アルバムの制作は大きなチャレンジだったと思います。自身で成長したと思う部分はありますか?

ハコス:いい曲を作れる自信はつきました。昔は音楽を作ることにまったく自信がなかったので。歌ってみた動画のミックスとかも、いつも不安で周りの友達に相談していたんですけど、このアルバムを完成させたことで、どんな曲がいい曲で、それを作るためには何が必要か、どんな楽器がいいか、そういう知識を増やすことができたと思います。

――次に作りたい音楽のヴィジョンも浮かんできたのでは?

ハコス:はい、もうあります。相談してます(笑)。

――最後にアルバムを楽しみにしているリスナーにメッセージを。

ハコス:いつも僕が作った曲を聴いてくださってありがとうございます。もっともっと学ばなければいけないこと多いですけど、ぜひアルバムを楽しんでいただけたら嬉しいです。

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