2020/11/02
11月2日付のHot 100は、LiSAのワンツーフィニッシュのインパクトが大であるが、他にも見逃せないチャートイン楽曲がいくつかある。そのひとつが、aikoの「ハニーメモリー」だ(【表1】)。10月21日にリリースされたこの曲は彼女の記念すべき40枚目のシングル曲。彼女らしい切ないラブソングだ。
「ハニーメモリー」のチャートの動きに関して、まず最初に大きなアクションとなったのがラジオのオンエア回数だ。すでに10月19日付で1位、先週の10月26日付では2位、そして今週は再び1位と圧倒的な強さを見せている。全国のラジオ局に多くのシンパがいるベテランであると同時に、プロモーションが行き届いているからだろう。加えてフィジカルのCD売り上げも強い。LiSA、A.B.C-Zに続く3位となっており、この競合の中でしっかりとCDを売り上げているのはさすが。彼女のファンは基本的にはCDを購入する層が多く、このフィジカルのポイントは非常に大きい。
ただ一方で、配信が少し伸び悩んでいる可能性もうかがえる。ダウンロードでは58位とチャートインはしているが、ストリーミングはまだ圏外だ。今後の展開としては、ストリーミングをいかに伸ばせるかがポイントになってくるだろう。Twitterのポイントも50位と話題は作れているので、彼女のファンはけっしてデジタルに弱いわけではないはず。ただ、昨今のヒットの傾向としては、ストリーミングがロングヒットとなるかどうかのカギだ。今年にストリーミングと、ミュージック・ビデオのフル解禁をしたばかりのaikoだが、ストリーミングが伸びてロングヒットとなれば、カラオケのポイントも伸ばせる可能性があり、そうなればさらなるロングヒットとなる。
aikoほどのキャリアを持つと、ファン層を大きく広げるのはハードルが高い。しかし、ストリーミングの解禁によって彼女の音楽に触れるチャンスも増えているはず。aikoに限らず、ストリーミングやYouTubeなどを駆使していかにファン層を広げていくかは、ベテラン・アーティストの課題である。それを乗り越えれば、新しいアーティストとしっかりと競合しながら、チャート上で確実に結果を出せるはずだ。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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