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データで読み解く【MUSIC AWARDS JAPAN】最優秀楽曲賞――JAPAN Hot 100と比較

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 「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトとした国際音楽賞【MUSIC AWARDS JAPAN(ミュージックアワーズジャパン)】(以下、MAJ)が、2025年5月に初開催される。本アワードは、音楽業界の主要5団体が共同で設立した一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)が主催する新しい音楽賞だ。

 今年のMAJでは、2024年2月5日から2025年1月26日までに話題となった作品およびアーティストを対象に、<最優秀楽曲賞>や<最優秀アーティスト賞>などの主要6部門をはじめとする60以上の部門を表彰する。3月13日に各部門のエントリー楽曲が発表され、現在は国内投票メンバーによるノミネート作品の選考が進行中だ。

 今回は、その中でも注目度の高い<最優秀楽曲賞>にエントリーされている256曲を、ビルボードジャパンの総合ソングチャート“JAPAN Hot 100”(以下、BBJ)と比較。データをもとに、MAJ独自の傾向や特徴を深掘りしていく。

<最優秀楽曲賞>エントリー楽曲一覧はこちら

BBJチャート指標の比較

 まずは、両者における構成指標の違いを見ていきたい。上図は<最優秀楽曲賞>のエントリー256曲の各指標のポイント占有率を示したものだ。BBJは、MAJと同じ集計期間で区切った“JAPAN Hot 100”上位256曲のポイント占有率となる。

 <最優秀楽曲賞>は、2か月単位で作成される“JAPAN Hot 100”の6指標とUGCデータを合算したオリジナルチャートからエントリーされる(詳細はこちら)。そのため、ポイントピーク期間が短い楽曲でもエントリーされやすい構造となっている。

 両者に共通する特徴として、いずれもストリーミングが最も大きな割合を占めている点が挙げられる。このことから、現代における音楽聴取の中心がストリーミングであることが、両者ともに強く意識されているとわかる。

 さらに、MAJではCDが10%を占めるのに対し、BBJではわずか2%にとどまっている。日本は世界的に見てもCD販売の市場規模が依然として大きく、MAJはこの「日本独自のユーザー動向」も重視していることが考えられる。また、ダウンロードもMAJは7%、BBJは4%となっており、MAJは所有型の指標への評価が相対的に高いことがわかる。

 このように、MAJはストリーミングを基軸に据えつつも、より多様な指標でのバランスを意識していることが読み取れる。日本の市場特性を考慮した設計になっている点が特徴と言えるだろう。

楽曲属性の分析

 MAJのジェンダー比は、男性アーティストが61%、女性アーティストが30%、混合が9%となっている。BBJと比べて男性アーティストの割合がやや少なく、女性アーティストの割合が多い。混合ユニットはBBJのほうが多く、これは主にYOASOBIの楽曲が多くランクインしていることが要因である。

 またエントリー楽曲の84%が日本のアーティストの楽曲となっている。BBJに比べると、MAJのほうが韓国アーティストの楽曲がやや多い(MAJ:14%、BBJ:10%)。日本と韓国以外のアーティストは、マライア・キャリー、ワンリパブリック、テイラー・スウィフトの3組のみで、いずれもアメリカのアーティストとなる。また、ロゼ & ブルーノ・マーズ、BE:FIRST X ATEEZといった国混合のコラボレーションも2曲エントリーしている。

 MAJのメンバー編成割合はグループ(37%)が最多で、次いでバンド(27%)、ソロ(26%)の順となっている。CDセールスが強いダンス&ボーカルグループが、グループの比率を押し上げている。一方、BBJはバンド(36%)が最も多く、Mrs. GREEN APPLEやback numberなどの人気バンドのロングヒットが影響している。256曲のうち、それぞれのアーティスト数は、MAJが124組、BBJが103組となっており、MAJのほうがアーティストのバリエーションが豊かである。


※「POP」は洋楽のみ

 ジャンルの楽曲数占有率は、両者ともにポップとロックが中心となっている。特にMAJはK-POPが14%、アイドルが9%を占めており、ダンス&ボーカルグループの影響の大きさが見られる。ヒップホップやボーカロイドは1割未満だが、これらのジャンルは<最優秀国内ヒップホップ/ラップ楽曲賞>や<最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞>といった単独部門が設けられている。

 エントリー楽曲の43%はノンタイアップ曲である。同時に、アニメ(19%)、ドラマ(13%)、CM(11%)などのタイアップ曲も目立っている。BBJはよりタイアップ効果が継続的に表れており、MAJは比較的タイアップに依存しない、多様な楽曲が集まっていると言える。

 これらのデータから、MAJは日本国内におけるメインストリーム市場を幅広く網羅しつつ、多様な指標をバランス良く反映したアワードであることが見えてきた。特にCDやダウンロードなど日本独自の音楽市場の特性を反映した指標への評価も組み込まれている点が、BBJとの大きな違いだ。

 この設計が、今後の音楽市場や日本の音楽を世界に発信していく上でどのような影響を及ぼすのか、4月17日のノミネート楽曲発表、そして5月21日・22日の授賞式に注目したい。

 なおビルボードジャパンでは、今後も【MUSIC AWARDS JAPAN】の特集を公開予定。第2弾では<最優秀楽曲賞>と<Top Global Hits from Japan>の比較を行う。

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