Text: 柴 那典
Photo: Taku Fujii, Seidai Takekoshi, “SUMMER SONIC BANGKOK 2024” (2024.08.24)

世界各国で熱狂を生み出した2024年

　BABYMETALが前人未到の境地を突き進んでいる。世界各国で熱狂を呼び、驚異的な動員を記録している。

　2024年12月5日、BABYMETALはアメリカ・カリフォルニア州アナハイムで【BABYMETAL WORLD TOUR 2024】のファイナル公演を開催。同年4月からの世界22か国、51公演を巡るワールドツアーを完遂し、累計の動員数は約101万人を記録した。

　昨年2023年4月にSU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALの3人体制による“新生BABYMETAL”として新たな活動をスタートさせたBABYMETAL。そこから2024年3月にかけて世界25か国、98公演、約28万人を動員した【BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024】はその時点で自身最大規模のワールドツアーだったわけだが、それに比べても単純計算で動員数は3.6倍以上。2024年も休むことなく世界中でライブを繰り広げ、さらなるスケールアップを果たしたことになる。

　なぜ、どのようにして快進撃を果たしてきたのか？　あくなき挑戦を積み重ね、グローバルに支持を広げたBABYMETALの2024年の歩みをいくつかのトピックから振り返りたい。

Photo: Taku Fujii

　まず特筆すべきトピックは、旺盛なコラボレーションの展開だ。

　なかでも今年のBABYMETALの勢いを象徴する一曲になったのが、ドイツのエレクトロコアバンドELECTRIC CALLBOYとのコラボ曲「RATATATA」だろう。5月23日にリリースした同曲は、パーティー感あふれるサウンドと中毒性あるフレーズで新たなライブアンセムの座を獲得。米ビルボードのハードロック・デジタル・ソング・セールスで1位を獲得するスマッシュヒットを記録した。

　5月25、26日には、埼玉・さいたまスーパーアリーナでBABYMETAL主催の音楽フェス【FOX_FEST】を初開催した。2日間で約3万人を動員したこのフェスもBABYMETALにとって新たな挑戦の一つといえるだろう。このフェスのステージでELECTRIC CALLBOY と共に「RATATATA」をライブ初披露。「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」のパフォーマンスではPOLYPHIAのティム・ヘンソンとスコット・ルペイジがゲストギタリストとして共演し、個性的なバンドが集う次世代のメタルシーンとBABYMETALの同時代的な繋がりを見せるフェスとなった。

　Bring Me The HorizonとのコラボレーションもBABYMETALのグローバルな支持を大きく広げたはずだ。2020年リリースのアルバム『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』に収録された「Kingslayer ft. BABYMETAL」でのコラボを筆頭に、彼らとBABYMETALはこれまでたびたび共演してきた“盟友”とも呼べる関係。今年も4月27日にラスベガスで行われたフェス【Sick New World】、ヘッドライナーとして出演した8月18日の【SUMMER SONIC 2024】東京公演、8月25日にインドネシア・ジャカルタで開催された主宰フェス「NEXFEST 2024 - JAKARTA - INDONESIA」など、各地のBring Me The Horizon のステージにBABYMETALがゲスト出演し同曲を披露した。ちなみに同曲は2024年6月25日にアメリカレコード協会（RIAA）からゴールドディスク認定とアメリカでもロングヒットを記録している。

　アジアの新鋭アーティストとのコラボも見逃せない。3月14日にはタイのラッパーF.HERO、タイのロックバンドBodyslamとのトリプルコラボシングル「LEAVE IT ALL BEHIND」をリリース。ラップ、ロック、メタルを融合させたヘヴィでエネルギッシュな曲調で新境地を開拓した。さらにBABYMETALは8月18日の【SUMMER SONIC 2024】東京公演、そして8月24日にタイ・バンコクで初開催された【SUMMER SONIC BANGKOK 2024】のBodyslamのステージにスペシャルゲストとして参加。【SUMMER SONIC BANGKOK 2024】ではF.HEROも登場し「ギミチョコ！！」、「PA PA YA!! （feat. F.HERO）」、「LEAVE IT ALL BEHIND」の3曲をコラボするというスペシャルな共演となった。

　B'z松本孝弘との共演も大きな話題を呼んだ。2019年にリリースしたアルバム『METAL GALAXY』収録の「DA DA DANCE（feat. Tak Matsumoto）」でのコラボから交流が始まった両者。2024年9月18日には松本孝弘率いるバンドTMGが20年ぶりの2ndアルバム『TMG II』をリリースし、その収録曲「ETERNAL FLAMES」でBABYMETALのゲスト参加が実現。9月13日放送のテレビ朝日系『ミュージックステーション2時間スペシャル』に出演し、9月15日に開催された【テレビ朝日ドリームフェスティバル2024】でライブ初共演も実現した。

　2つ目のトピックは海外フェスでの熱狂だ。

　6月にはUKとヨーロッパで数々の巨大野外フェス出演が実現した。6月15日には約10万人を動員するイギリス最大級のロックフェス【DOWNLOAD FESTIVAL】のメインステージに出演。6月7・8日にドイツで開催された【ROCK IM PARK】と【ROCK AM RING】ではドイツ出身のELECTRIC CALLBOYとの共演が実現し、他にもフランスの【Hellfest】など計8カ国で音楽フェス10本への出演を果たした。他にもオランダ・アムステルダム、ポーランド・ワルシャワ、フランス・トゥールーズでヘッドラインショーを3公演行い、通算13公演からなるUK & EUツアーとなった。

Photo: “SUMMER SONIC BANGKOK 2024” (2024.08.24)

　8月には前述の【SUMMER SONIC BANGKOK 2024】や【NEXFEST 2024 - JAKARTA - INDONESIA】などアジアのフェスに出演。シンガポールでのワンマンライブ、マレーシアでのBring Me The Horizonのライブへのスペシャルゲスト出演も含む2度目のアジアツアーが実現した。

　10月から11月にかけては、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、チリ、メキシコを回る初の中南米ツアーを行った。Slipknot主催のフェス【KNOTFEST】4公演、ワンマンライブ3公演、そしてSlipknotのライブへのスペシャルゲストとしての出演と、全6か国8公演を行い、約18万人を動員した。

　そして11月から12月にかけては全18公演からなる全米ツアーも拡大。こちらもソールドアウト公演が続出し、現地のファンにとってもプラチナチケットとなっていたようだ。

Photo: Seidai Takekoshi

　こうして世界各国で熱狂を生み出してきたBABYMETAL。その人気は数字にもあらわれている。先日Spotifyが発表した2024年のランキングでは「海外で最も再生された国内アーティスト」で9位にランクイン。ビデオリサーチが先日行った「アジア・アメリカ12の国と地域における日本のタレント・アーティスト人気度調査」では、アーティスト部門でアメリカでの1位となった。

　2014年に行った初のワールドツアー、伝説となった【Sonisphere Festival UK】から10年。度重なるライブで各地のファンの根強い支持を築き上げてきただけでなく、TikTokやSNSを通して新しい世代のリスナーのハートを掴んできたことがこの躍進の由来と言っていいだろう。

Photo: Seidai Takekoshi

　この先のBABYMETALはどこに向かうのか。

　まず12月11日にはライブフィルム『BABYMETAL LEGEND - 43 THE MOVIE』Blu-ray & DVDがリリースされる。こちらは2024年3月23日、24日に沖縄コンベンションセンター展示棟で開催された自身初の沖縄公演【BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024 TOUR FINAL IN JAPAN LEGEND - 43】の模様を収めた映像作品。BABYMETALの魅力は何よりライブの臨場感にあるのだが、それをたっぷりと堪能できる作品になっている。

　そして2025年も精力的なライブは続く。2025年2月から3月にかけてはオーストラリアで【KNOTFEST AUSTRALIA】への出演が決定。そして2025年5月にはイギリスおよびヨーロッパ各国で自身初となるアリーナツアー【BABYMETAL UK & EUROPE ARENA TOUR 2025】の開催が発表されている。ツアーファイナルは日本人グループ初となるイギリス・ロンドンのThe O2アリーナだ。BABYMETALのヒストリーの中でも大きなターニングポイントとなるに違いない。

　そして、ツアーのティザー映像では未発表の新曲らしきサウンドを聴くこともできる。こちらのリリースも含めて新たな動きも気になるところ。2025年もBABYMETALから目が離せない1年になりそうだ。