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<インタビュー>待望の初音源をリリースしたTESTSET・砂原良徳×LEO今井が語る、METAFIVEからの意欲的メタモルフォーゼ



インタビュー

 2021年8月20日、METAFIVEとして出演が決まっていたが、それがかなわなくなった【FUJI ROCK FESTIVAL'21】に、METAFIVEのメンバーである砂原良徳とLEO今井に、サポートでドラム白根賢一とギター永井聖一が加わった4人で、「METAFIVE特別編成」として出演。その後、当初一夜限りの予定だった特別編成のスペシャルバンドへの出演オファーが届いたことから、2022年4月14日のリキッドルームのイベント(THE SPELLBOUNDとの対バン)を皮切りに数多くのイベントに出演することになり、名義を「METAFIVE特別編成」から「TESTSET」に変える。つまり、この時点で、新しいバンドになる。
 そして、「Carrion」「Testealth」「No Use」「Where You Come From」と、中野サンプラザで向井秀徳が加わって演奏したKIMONOS(向井と今井による2010年結成のユニット)の「No Modern Animal」のライブ音源、以上5 曲を収録した、TESTSETとしての初音源『EP1 TSTST』が8月12日にデジタル・リリースされた。
 この記事は砂原良徳とLEO今井が、初音源について、そして、なぜTESTSETとして活動することを選んだのかに関して、初めて正面から語ったインタビューである。ふたりの言葉を読んでいただければ、そしてその上でTESTSETの圧倒的な表現に触れていただければ、彼らの本意が伝わるのではないか、と思う。(Interview & Text:兵庫慎司 / Photo:Yuma Totsuka)

「TESTSET」の”誕生”

――2021年のフジロックのライブ、現場で観ました。まず出演をキャンセルしなかったことに驚いたんですが、観たらすごく良かったことに、さらにびっくりして。

砂原良徳:ああ。あの時は、いろんな人から連絡が来て。何年も連絡を取り合ってなかったような人まで、「観た、すごい良かった」とか。YouTubeで配信があったのが大きかったんでしょうね。

LEO今井:そうでしょうね。

砂原:でもやっぱり、そこに至るまでのMETAFIVEのストーリーがあったから。観る前に、前提みたいなものを、個人個人で設定するじゃないですか。それで良く見えた、っていうのもあったよね、たぶん。

今井:うん。その分注目されていたというか。

砂原:やる前はね、「こんなもんMETAFIVEじゃねえよ」ってSNSで言われたりしていたけど、逆に言うと、失うものもないっていうか。僕は「これで最後かも」って思ってたところもあったので。そういう意味では、捨て身でやれる部分もあったし。あとは、ショー自体をビシッと決めれば……。「こんなもんMETAFIVEじゃない」っていうマイナスのところから始まるわけじゃないですか。だから、レンジは相当広くなりますよね。マイナスからいきなりプラスになるわけですから。そういうふうになる可能性もなくはない、とは思っていたんですけど。

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――そもそも、ふたりでも出ようっていうことを決めたのと、あの編成でやることを考えたのは、どんな経緯だったんでしょうか。

砂原:METAFIVEのセカンド・シーズンっていうのは、コロナ騒動があり、(高橋)幸宏さんの健康問題が発生して、そのあとにオリンピック問題が発生して、っていうところで「こういう危機だけど、なんとか乗り越えていこうよ」っていう雰囲気がバンドの中にあんまりなくて。そもそもバンドっていっても、みんなが帰れる実家みたいなものじゃなくて、決められた期間だけ集会所に集まって、やっているようなバンドだったんで。

――まあ、始まりからそうですもんね。

砂原:だから、みんなそれぞれ考えてることもバラバラ、みたいな感じで。で、フジロックの前に、横浜でライブをやることになってたんだけど、それは中止になり(2021年7月26日、KT Zepp Yokohama)。幸宏さんは出ないことになって、その時に白根(賢一)さんが登場しますけど、それは幸宏さんの指名だったんですね。それで白根さんが入って、(有観客)公演は中止になったけど、後々の配信用に、無観客でライブをやって撮りましょう、ということで。


▲METAFIVE - The Paramedics (Live at METALIVE 2021)

――結果、11月20日に動画配信されましたよね。

砂原:で、そのあとフジロックのことをどうするか、ってなった時に……それぞれの考えがある中で出演に向けて最後に残ったのが、このふたりで。「どうする?」って、彼に私は訊きまして。なんて言ったんですか? その時。

今井:いや、「やりますよ」って。

砂原:「どんな形でもやりたい」と言っていて。でも、いろんな考えがある中、彼のバンドへの貢献度を考えると、もっとも権限があるのは彼だと、僕は思っていたんです。彼を尊重したいので、彼がやりたいって言うなら……。当初は、白根さんと僕とLEOくんの3人で、もうちょっとアレンジをシンプルにして出ようか、って考えてたんですけど、永井聖一っていう人間が浮上して。永井くんが入れば、元の形をある程度キープしてできるよね、っていうことで。

――永井さんとは前から接点があったし。

砂原:僕はありましたね、何度か。特に、THE BEATNIKSのツアー(2018年)で、僕も永井くんもメンバーだったので。だから全員、高橋幸宏の息がかかった人間で構成する、っていうのは、なんとなく条件としてあって。だったらこの4人でできるかな、ということを言った時も、「えっ、この状況で出る? ちょっとおかしいんじゃないの?」って雰囲気はあったの、憶えてない?

今井:そうでしたっけ?

砂原:(笑)そうだったよ。

――じゃあLEOさん的には、疑問なく「出るでしょ」っていう感じだったんですか?

今井:いや、疑問はありましたけど(笑)。

砂原:「できますか?」って僕に訊いてたよね。

今井:そうそう。でも……なんで私が(METAFIVE出演を)辞退しなきゃいけないんだ?って思ったんですよ。

砂原:そもそも僕らふたりは、幸宏さんは無理としても、横浜のスタイルで出ることは、本当はなんら問題ないんだけどね、っていうふうには思ってたんですけど。で、最初は周りも「ええっ?」みたいな雰囲気があったんですけど、ふたりとも本気で「こうするぞ、ああするぞ」と説明して、ちょっとずつ話を進めていって。そうするとまわりも理解してきて、動き出した、っていう感じですね。あの状況になって、なんの説明もなく……口で説明するのも変じゃないですか。やっぱり音と姿勢で説明しないと。何か言うよりは、そこで何をやるかが重要なわけで。だったら、これで最後かもしれないし、我々の姿勢はこうである、というのをはっきりさせたい。そういう思いが僕はあったんですね。あなたもあったでしょ?

今井:もちろん、うん。

砂原:あと、SNSなんかが発達して、昨今、キャンセルカルチャーみたいなことが言われていて。テレビとか、映画のスクリーンとか、ライブとか、聖人君子みたいな人しか出ちゃダメよ、みたいな雰囲気、ありますけど。「これがあなたたちの求める世界ですよ?」っていうのを見せたい、っていうこともありました。「あなたたちが求めてる世界はこれよ? これでいいわけ?」っていう、そういう投げかけも、ちょっとありましたね。

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エネルギーを出し切れる、
もう1つの場所

――で、ライブ、手応えあったでしょ?

今井:うん。終わってから反応を見たら、完全な事故ではなかったな、っていうのは思いましたね。そうなる可能性も想像してましたから。大ブーイング、物を投げつけられる、完全なディザスターになるかもしれないと。そうならなかったし、バックステージも「良かったね!」っていうリアクションだったから。

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――あの時はまだ、TESTSETという名前がなかったですよね。

砂原 :僕らは、基本的にはあれ一回きり、っていう考え方だったんですが。フジロックが終わってまもなく、「フェスに出てください、あの形で」っていう依頼が来たわけです。福岡の【CIRCLE】と、大阪の【OTODAMA】から。それと、リキッドルームから「THE SPELLBOUNDとやりませんか?」っていう話が来て。「えっ?」と思って。

今井:(笑)。

砂原:フジロックの配信があって、それがすごく機能したんだと思います。だったらMETAFIVEはすぐには動けないし、「METAFIVE特別編成」っていう名前でしばらくやりながら、その時間に本体はどうするか考えたらいいんじゃないかな、っていうふうに思ってたんですけど、それについて議論を重ねていくうちに僕の中で、METAFIVEは高橋幸宏のもの、っていう結論に達して。

――まあもともと、幸宏さんのライブのために集まったのがきっかけですもんね。

砂原:はい。それで、「だったら名前を変えてやる?」って話したんですが、「どうする? 名前を変えるんだったら、新しいバンドになるよ?」っていう。そしたら「やりましょう」って言ったんだよね?

今井:言いましたっけ?

砂原:(笑)。

今井:いや、言いましたよ。

砂原:で、TESTSETっていう名前は、LEOくんが考えたんですけど。

今井:回文がいい、というオーダーがあったんですよ。砂原さんから。だからいろんな回文の単語を見つけて、その中から「TESTSET、どうですか?」と言ったら、「97点」と。

砂原:(笑)。自分の中では97が最高点だから。100っていうのは幻想、って考え方だから。

――「俺、今から新しくバンドやるの?」っていう戸惑いは、ありませんでした?

砂原:なかったですね。METAFIVEでやろうっていうことのエネルギーが、僕にも余ってたので。あと、彼はほんとに、さまざまな能力が高いし。彼も、ライブやりたい、活動したいっていう欲求があったでしょうから。

今井:もちろん、もちろん。砂原さんが言ったように、METAFIVEで始まって、ウワッて湧いたエネルギーのやり場がなくなったら、もう一個場所を作らないと、という。

――今作収録の「Carrion」は、前からライブでやっていますよね。

砂原:はい。新しい名前を付けてしまったからには、METAFIVEの楽曲だけでライブを構成していくのは……。1曲ぐらい「新しいプロジェクトなんだ」っていうのがあった方がいい、っていうことで、急いで作ったんですけど。

――「Carrion」以外の3曲を作ったのは?

砂原:もっと後です。4月ぐらい、ライブをやっている時に、スタッフから「配信でもいいから新曲を出そう」っていう話が湧いてきて。まあ僕らも、ライブのレパートリーとして、いつまでもMETAFIVEの曲だけやってるわけにもいかないな、なるべく新しいレパートリーを入れていきたいな、っていう気持ちがあったから、急ぎで作って。1ヵ月強で作ったんですよ、その3曲。たとえばライブを観た人が、「TESTSET、どんなバンド?」って検索しても、僕らの曲が何もないわけですね。そういうアクセスポイントを、一時的にでも作っておこう、っていうのもあって。


――しかし、1ヵ月強で3曲っていうのはすごいですね。まりんさんのイメージとして、人のプロデュースとか曲提供は納期どおりにできるけど、自分の作品となると、非常に時間がかかるという──。

砂原:そうです。まったくそのとおりです。

――それが1ヵ月強で3曲というのは……あ、でも、METAFIVEの時もそうだったのか。

砂原:そうですね。人と一緒にやる場合は、締切を決められると、それまでに仕上げなきゃなんないから。でもTESTSETは、LEOくんが歌詞を書いて歌って、永井くんがギター弾いて、白根さんがドラムを叩いて、僕が打ち込みやって、LEOくんも打ち込みやって、僕がミックスもマスタリングもやる。っていう意味では、自己完結できるシステムがもうできている。だから、追い詰められてもそこそこ回せる、っていう状態ではありますね。

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    「本当のスタートは来年」


「本当のスタートは来年」

――TESTSETの活動の中で、もっとも楽しさを感じるところは?

今井:うーん……そうねえ……。

砂原:ない?

今井:楽しいかなあ?

砂原:(笑)。

今井:いや、でも、作品を作るのは、やっぱり楽しいですよ。作り方は2パターンあって、砂原さんが持ってるトラックに、私が歌詞とかメロディを付けるパターンと、私がデモ曲を砂原さんに渡して、そのトラックをもっときれいに、いい感じにしてくれるパターンと。毎回、予想がつかないところに行くんですね、曲が。それがすごくいいんですよ。たとえば以前、METAFIVEの「Full Metallisch」っていう曲が……あれは元々SE用の破片みたいな短いトラックだったんですよ。


▲METAFIVE(砂原良徳 × LEO今井) - Full Metallisch(FUJI ROCK 21)

砂原:ジングルみたいなね。

今井:それを私は、いいなあと思って、歌をはめて、曲にしたんですけど。その感触を、今回も味わえたんで。最終的に、おもしろい音楽が出来てきてるんですよね。今まで聴いたことがない、ロックとテクノの融合。ロックとテクノって、合体させると「あれ?」みたいなことが、よくあるんですけど──。

砂原:そうだよね。

今井:ほんとによくあるんですけど、TESTSETは、それがいい方に行っている。それが最大のモチベーションですね。

砂原:僕もおんなじですね。ふたりのタイプが違うんで、「混ぜるとどうなるんだろう?」っていう楽しみは、曲を作っていて、いつもあって。METAFIVEのセカンド・アルバムの時のことを考えると、今につながってるもんね。ファーストの時はそうでもなかったけど、セカンドの僕らの曲の作り方は、TESTSETをやってる感じだよね、今考えるとね。

今井:制作のおおまかな過程は一緒ですね。

砂原:それを作って、ライブで、僕より若いLEOくんとか永井くんがいい感じでやってるのを見て、まあ、楽しいっていうか。「いいねえ」っていう感じで見てますけど。

今井:「いいねえ」って(笑)。

砂原:あと僕、ライブが、実はそんなに好きじゃない感じなんですけど──。

――今、それを言わなきゃと思ってたら、先に言ってくださって、助かりました(笑)。

砂原:やっぱり、ライブやるのはいいなあって、近頃は思うようになりました。ひとつの区切りになっていくし、「あ、じゃあもっとこういう曲を作ってみよう」みたいなのが、ライブをやると見えてきたりするんで。

――ライブのトータル・プロデュースはどなたが考えているんですか?

砂原:いや、基本的にはふたりで。映像とかのチームはMETAFIVEからの流れだし。

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――たとえば、メンバー4人が横一列に並んで演奏するフォーメーションとかは?

今井:ああ。あれ、なんでああなったんだっけ? 普通、4人って、そういうふうに並ばないですよね。ドラムは後ろにいますよね。

砂原:あの趣味は、たぶん自分なのかな。普通のロックバンドじゃない感じにしたいっていう。昔のテクノ、ニューウェイヴの、なんかカッチリした感じ……っていうのは、僕の趣味かも。カッチリしたデザインの中で、人が、人間っぽく動くのが、いいんですよね。マス目を引いた中に、有機的なものをボンと入れると、そのマス目と有機的なものって反対のものじゃないですか? すると違いが際立って、両方のらしさが出るっていう考えが、僕はあるんですね。完全に人間のビートで、人間が歌って、ってやっちゃうと、それは人間のヒューマンDNAの音楽だし、逆にテクノはテクノだけでやっちゃうと全部きれいに並んじゃうし。テクノと人間を両方出すと、お互いにぽさが強調される。それは最近すごく考えるところで。LEOくんの人間っぽさを、機械のビートとか打ち込みと混ぜると、ぽさが強調されるな、って思ってるところがあります。

――このEPを出したあと、アルバムに向かっていく、ということはあるんですよね?

砂原:まあ今年は準備期間というか、TESTSETの0年度、っていうふうに、自分では定義してるんですけど。それで今年やって、良ければこのまま進んでいって、アルバムを作ったり、ツアーをやったりしよう、っていう考えはもちろんありますね。だから、本当のスタートは来年。

――LEOさん、それでよろしいですか?

今井:いいですよ!

砂原:(笑)。でも、音を作るんだったら、もうちょっとじっくりやんないと。今回のEPは、1ヵ月ちょっとで、冷蔵庫であるもので作りました、っていう──。

今井:うん、そんな感じ。

砂原:アルバムを作るんだったら、半年ぐらいはほしいですけど。

――あ、半年でできます?

砂原:半年はほしいですね。やっぱり1ヵ月だと、被写体から離れてみたりとか、一回忘れて、もう一回見たら「こんなとこに気づいた」とか──。

今井:そうなんですよね、今回はそれができないから。

砂原:そういう意味でも、半年ほしい。半年ずっと作りっぱなしっていうわけじゃないんですけど、間を空けながら作っていくと、もうちょっと作品に奥行きが出てくるので。

――いや、半年なら安心しました。だってソロ・アルバム、11年出てないですからね。

砂原:いや、もう、ソロ・アーティストとしては死んだんじゃないですか?

――ちょっとちょっと!(笑)

砂原:いや、やりますよ。TESTSETがちゃんとバンドとしてエントリーができれば、ソロとかの余裕もまた出て来るんじゃないですかね。もうほんとに、そんなことも言ってられない年齢なんで。作らなきゃなんないとしたらもう作るでしょう、さすがに。

――LEOさんは、そういう心配はいらない気がしますけど。ソロもやるでしょ、今後も。

今井:どうかな……まあ、やるでしょうね。

砂原:やるでしょ。バンドがある程度形になったら、また違うこともやってみたくなるだろうしね。ライブはソロでもやってるしね。

今井:うん、そんな感じ。

砂原:アルバムを作るんだったら、半年ぐらいはほしいですけど。

――いずれも楽しみにしています。今日はありがとうございました。

砂原:でも、このインタビューが出れば、みんな、TESTSETってなんだかよくわかんない、っていう感じだったのが、ちょっとはクリアになるかな、と思いますね。

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