Billboard JAPAN


Special

ジャグワー・マー 『ハウリン』インタビュー

ジャグワー・マー 『ハウリン』インタビュー

 「彼らの話をするのに忙しくて、オアシスの再結成の話なんかしてる場合じゃない。」とノエル・ギャラガーをも唸らせるオーストラリア出身のジョノ・マーとガブリエル・ウインターフィールドによるジャグワー・マー。マッドチェスターを彷彿とさせる中毒性のあるグルーヴと70年代ロックのサイケデリアが織り交ざった「The Throw」で一躍脚光を浴び、地元オーストラリアを代表する音楽フェスティヴァル【Big Day Out】への出演、フォールズやThe XXのオープニング・アクトを経て、ライブ・アクトとしての実力も評価されている彼ら。同郷のテーム・インパラがそうであるように、オールドスクールなサウンドを現代にアップデートしつつ、ネット世代特有の雑食性が同居した独自のスタイルを築き、今年8月には待望のデビュー・アルバム『Howlin'』をリリースした。現在はベーシストのジャック・フリーマンが加わり、3人編成で活動している彼らが8月の【SUMMER SONIC】にて初来日。例を見ない猛暑の中、午後のビーチ・ステージというハードな環境にもめげず、白熱のライブを見せてくれた3人に話を訊いた。

ジャンルにとらわれないようなバンドが近年増加傾向にあるのは、
情報社会特有の背景も関連している

「What Love?」
▲ 「What Love?」 (Official Video)

――出演するはずだった【NANIWASONIC】が中止になってしまって残念でしたね…。東京に到着してからは、どのように過ごしていたのですか?

ジョノ・マー:原宿に行ってショッピングをしたよ!Five Gっていうヴィンテージ・シンセサイザーの店に行ったんだけど、欲しいものが沢山ありすぎた。でも持って帰るのが大変だからね…(笑)。

ガブリエル・ウインターフィールド:今僕が着ているメタリカのTシャツは、明日彼らのライブを観るのに備えて買ったよ。というか、今着てる服はすべて日本で買ったものなんだ。

――気合十分ですね(笑)。ではまずこのバンドのバックグラウンドについて教えて下さい。2人は元々違うバンドで活動していたということですが、一緒に音楽を作ろうと思ったきっかけは?

ガブリエル:とりあえず2人とも一文無しで…。

ジョノ:(大笑)

ガブリエル:それは置いておいて、僕は単純に誰が違う人と何か新しいことをやってみたかったんだ。

ジョノ:うん、特に深くは考えていなくて、同じ都市に住んでるミュージシャン、同志、友達だったから、一緒にコラボしてみることが自然だったんだ。

――2人が様々な音楽から影響を受けていることはデビュー作『Howlin'』を聴けば一目瞭然ですが、2人の間でそれらは大体一致しているのですか?

ガブリエル:そうだね。ジャンルの隔てなく2人とも共通して好きなものが多い。これは僕らは考え方がとても似ているからでもあると思うんだ。それにジョノが好き好んで聴いているバンドが、僕が個人的に進んで聴くようなものでなくても、クールと思うことはよくあるし。あれは何のバンドだっけな…忘れたけど…。

ジョノ:そう言われると気になるな~。何だったか憶えていないの?

ガブリエル:あ、オウテカだ!

ジョノ:ふ~ん、興味深いね。でも言ってる意味は分かるよ。評価しているけれど、好んでは聴かないってことだよね。

ガブリエル:もしかしたら、僕的にまだ聴く心構えが出来てないのかもしれない。特にオウテカは、アルバムをフルで聴くにはかなり根気がいりそうだからね(笑)。

ジョノ:結構強烈だからね。僕自身もずっと聴いてると、困憊してゾンビみたいになる。ラース・フォン・トリアーの作品を観た後みたいにね。

「Man I Need」
▲ 「Man I Need」 (Official Video)

――なるほど(笑)。

ガブリエル:最近僕がはまっているのは、特定バンドや時代のサウンドの音楽ではないものを発掘すること。おもに昔のビデオ・ゲーム音楽が気に入ってて、素晴らしいアーティストが山ほどいるんだ。でも多くの場合、過小評価されていたり、クレジットされていないことだってある。たとえば『ロックマン』シリーズの音楽とか。あれだけのものを作るには、多くの労力がかかったと思う。

――作品としては、映画のスコアを手掛けるのと同じぐらい時間を要するし、意味のあることなのに。

ガブリエル:そう、ゲーム全般に使われているから、長さとしてはそれぐらいあるし、あのシリーズの音楽はとにかく有名だからね。それなのにクレジットされていないなんて…。たかがゲームと思われるかもしれないけれど、僕らと同世代には彼らの作品やその価値を理解し、功績を評価している人が大勢いる。でもこれはアルバムのサウンドには直接的に影響していなくて…話がずれちゃうけど、こういうことを公の場できちんと言うのも大事かなと思って(笑)。

ジョノ:そうだね。話を戻すと、2013年という時代では様々な音楽の嗜好をもつことが当たり前になっている。この100年間の音楽史は事細かに文章化されていて、情報は増えていくばかりだ。50年前に音楽を作っていた人々に比べ、今の方が参照にするものが倍以上多い。ジャンルにとらわれないようなバンドが、近年増加傾向にあるのは、そういう情報社会特有の背景も関連していると思うな。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. これはアート全般に関して言えることだけど…
    すべての絵に縁があるように
    制限を決めることは大事だと思う
  3. Next >
これはアート全般に関して言えることだけど…
すべての絵に縁があるように
制限を決めることは大事だと思う

「The Throw」
▲ 「The Throw」 (Official Video)

――そして待望のデビュー作『Howlin'』が遂に完成しましたが、アルバム・リリース前にシングル・カットされていた「The Throw」や「Man I Need」など比較的アップテンポでバンド感が溢れる曲が多かったですが、後半にかけて、それとはまったく逆のアンビエントで、エレクトロニカやハウスっぽい曲も収録されているのに、いい意味で意表を突かれました。

ガブリエル:アルバムのシークエンスを行ったのは、すべての曲を書き終わった後で、2人でパズルを埋めていくように取り組んで行った。自然に流れ、曲ごとのストーリー、そして曲並べた時にそれを超越したストーリー性…もしくは新たなストーリー性が生まれるようなオーダーにしたかったんだ。最初からどういうサウンドの作品にするというのは決めていなくて、作っていく過程で自然と広がって、一番しっくりくる形に落ち着いたものなんだ。

――と言っても、一貫したサウンドとフィーリングを持った作品だと感じたのですが、それを保つ為に意識的に設けた制限や境界線などはありましたか?レコーディング環境については、フランスの田舎にある農家で行われたそうですね。

ガブリエル:うん、そこへ行ったこともいわゆる境界線の一つだね。これはアート全般に関して言えることだけど…すべての絵に縁があるように、やはり制限を決めることは大事だと思う。80年代にローランドの機材の発明に携わっていた日本人が言っていたのは、「オールインワンの機材は、何か一つの用途があるものに比べると全然売れない。」何故かと言うと、最終的に人は量より質を求めるから。多様性がない方が、物づくりするには有効だと感じるね。

ジョノ:フランスで作業を行ったのは、孤立していて、作業に集中できたからと理由もある。それに持っていったシンセサイザーや機材のみで作らければならないという制限があったことによって、より生産力が上がったと思う。もし行ってなかったら、今頃まだ「このギターじゃない方がいいな~」なんて感じで、アルバムは完成していなかったと思うから。細々とした部分ではなく、突発性やその都度のエネルギーを重視して作られた作品なんだ。

ガブリエル:そう、このペダル使ったらどうかな、とか細かいことよりも、とりあえず何でもやってみようという精神から予想してなかったものが生まれたりするのは、すごくエキサイティングだからね。

写真


「Man I Need」
▲ 「All Apologies (Nirvana cover)」 (Session Acoustique OUI FM)

――そのような即興性のある実験的なアプローチを取ることの醍醐味をもっと詳しく教えてください。

ジョノ:やはり“発見”の要素が一番大きいよね。ありふれたものに変化を加えていくことで、今までなかったものが生まれる。そのプロセス自体も興味深いものだと思う。たとえばバックトラックを30分ぐらいループしたものを作って、その上からガブリエルが即興で歌って、僕がインプロで演奏したるすることもある。この方法が有効なのは、曲を引き延ばすことによって、徐々に“ポップ・ソング”のありきたりな構造が分解されていくから。10~15分ぐらい経つとヘンテコになって…

――グルーヴに身を任せる…。

ジョノ:うん、繰り返されていたものが段々崩れていき、グルーヴが生まれ、サウンドも広がりを持つようになる。

ガブリエル:繰り返し同じ音が鳴っている部屋に人を閉じ込め、それ以外の刺激を与えずにいると幻覚を見始めるというのは、これまでにも実証されていうことだしね(笑)。今、君は“グルーヴに身を任せる”という表現を使ったよね。確かにそうだけど、同時にそれ以上に深くスピリチュアルなものでもある。脳波とそのパターンが反転し、クリエイティヴ面において、潜在的に物事を考えるようになって、詞的にも突拍子のない、面白いアイディアが浮かんだりする。これが音楽とリズムの力なんだ。
 もちろんいいアイディアが一発で思いつくこともある。その場合でも色々トライしないと、その最初のアイディア一番いいものだと気付かない。だからその意味でも実験することは重要なんだ。たとえ3分で書かれたとしても、その後5時間かけて実験したことで確証がもてる。

――では最終的にデビュー作は満足のいく作品に仕上がったと感じますか?

ガブリエル:正直な話…ノー(笑)。特にミックスの部分では、もっとこうすれば良かったな~、って後から思うことが多かった。

ジョノ:でもそれが普通なんだと思うよ。周りのバンドやプロデューサーと話してみると、納得がいかない要素が必ず一つは見つかる。でもそれがあるから、次のステップへのモチベーションとなるし、間違いから学ぶいい機会だと思う。もしこのアルバムが僕らが作れる最大限の“ベスト・アルバム”だとしたら、今後何かを作っていくという意欲、それに必然性もないから。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. (The XXの)ロミーと同じ格好をしたような子に
    「ライブ、すごく良かった」と言われると嬉しい
  3. Next >
(The XXの)ロミーと同じ格好をしたような子に
「ライブ、すごく良かった」と言われると嬉しい

――ライブに関してですが、アルバムをそのまま再現するバンドやもっと実験的なアプローチをとるバンドなど様々ですが、ファンの要望なども踏まえて、どのようなパフォーマンスを心がけていますか?

ガブリエル:僕はアルバムとライブを完全に切り離して考えているよ。2人だけで作ったアルバムだから、それを再現することは簡単だし、そうすることが求められることもあるけど。でも演奏する環境やエネルギーによって曲が変化した方がいいと思うんだ。実は話し合ったことがないんだけど、(ジョノにむかって)ニュージーランドでやったショーのこと憶えてる?「Man I Need」の超ダビーなバージョンをやったの。あれは最高にヤバくて、カッコ良かったよね。

ジョノ:憶えてるよ。確かにそうだね。で、質問に戻ると…。別にライブだからって、ライブ・ドラマーを使わなきゃ、とかそういう必然性はないと思うし。まだ発展途上で、どのようなライブ・バンドかというのは確立されていないけど、今後はライブならではのヴィジュアルにもこだわりたいとか色々な試してみたいアイディアはたくさんあるよ。

ガブリエル:アルバムに忠実なバンドっていうコンセプトは、僕にとって理解しがたいんだよね。だって、その曲がレコーディングというフォーマットで表現された、たった一つの解釈でしかないから。

ジョノ:そう、その特定の環境で曲が演奏された瞬間を捉えただけのものだからね。

ガブリエル:曲は、僕ら3人、そして演奏する楽器の中に存在し、常に変化しているんだ。

――今年の初頭には、フォールズとThe XXという全くタイプの違うバンドのサポート・アクトを務めましたが、客層がかなり違う分、楽曲に対しての反応はいかがでしたか?大きな会場で演奏することによって経験にも繋がったのでは?

ジャック・フリーマン:2つとも結構特殊だったよね。というのはフォールズと僕らは元々仲がいいので、バックステージとかサウンドチェックしてる時とか、変なテンションだったり、ツアー最初の頃の探り探りな感じがなかったから、気が楽だった。それに僕らのことを事前に彼らのファンに発信してくれていたし。

――実は、私がジャグワー・マーのことを知ったのはフォールズを通じてでした…。

ジャック:おぉ、そうなんだね。そう、そのおかげで、まだ無名だった僕らの音源を、彼らのファンは既に聴いてくれていたみたいなんだ。

ガブリエル:そうかな?僕には、バンド名は知ってるけど、曲は知らないという風に見えたけど。

ジャック:でも「The Throw」は知ってたよね。それにあの時はまだ2曲しかリリースしていなかったから…。

ジョノ:会場の面では、The XXの方が多少大きかった。彼らのライブは、内向的で“シネマティック”…僕らのライブは、エネルギッシュで、フォールズもサウンドはまったく違うけれど、エネルギーのレベルでは同じぐらいだと思うんだ。

ジャック:そう、僕らとフォールズのライブは、パーティーぽい雰囲気だからね(笑)。

ガブリエル:普段とは全然違う種類の観客だったけれど、どのショーも良かったし、大きなところであまり演奏したことがなかったから、いい経験になった。ハードではあるけれど、(The XXの)ロミーと同じ格好をしたような彼らのファンの子に「ライブ、すごく良かった」と言われるとやっぱり嬉しいし、自信にもつながるからね。

――最後に、先ほど孤立したという話が出ましたが、近年ではテーム・インパラの人気などもあり活性化されているように見受けられるオーストラリアの音楽シーンについてはどうですか?

ガブリエル:今はFacebookとかWhat's Upとか色々なアプリがあるし、パソコンやiPhoneがあればどんな情報でも発信したり、仕入れることが出来るから孤立されているという風には感じないな。

ジョノ:でもライブ・シーンに関しては、アメリカやヨーロッパからは、離れていて、ある程度の知名度がないとオーストラリアまでは来ないから孤立しているような気がするな。それに面白いバンドが活躍しはじめているけど、シドニーとかメルボルンに集中しているわけではなくて、オーストラリア自体広いからね。でも確実に活気づいてきたとは思うな。

"Come Save Me" Music Video

関連キーワード

TAG