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ペンタトニックス さらなる高みへ到達した最新アルバム『ラッキー・ワンズ』を解説



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 【グラミー賞】3年連続受賞、YouTube動画総再生回数51億回超えを記録する人気アカペラ・グループ、ペンタトニックスの約6年ぶり、通算2作目となるオリジナル・アルバム『ラッキー・ワンズ』が現在デジタル配信と輸入盤CDで発売中だ。

 2015年11月の日本デビューから、これまでに9回もの来日をし、パフォーマンスのクオリティの高さでリスナーを毎度感動させてきたペンタトニックスは、CM出演やOfficial髭男dismの「Pretender」のカバー、今年は人気一発撮りシリーズ<THE FIRST TAKE>の初の洋楽アーティストとして出演など、様々なアプローチで国内ファンを獲得してきた。そんな彼らの魅力と最新アルバムの聞きどころを、長年ペンタトニックスを取材している音楽ジャーナリストの鈴木美穂氏に解説してもらう。

 2013年に「ダフト・パンク・メドレー」のMVで全世界を震撼させたアカペラ・グループ、ペンタトニックスが、約6年ぶりのオリジナル・アルバム『ラッキー・ワンズ』を発表した。2015年の初オリジナル・アルバム『ペンタトニックス』は、アカペラ・グループとして史上初の全米アルバムチャート1位を達成。6年前と比べると、YouTube公式チャンネル登録者数は2倍以上の1,890万人に膨れ上がった。ちなみに東京都の人口が約1,396万人なので、現在の彼らの人気がどれほど凄いかが想像できると思う。

 いまや全米ツアーはアリーナクラスで、その驚異的なライブ・パフォーマンスも人気の理由となっている彼らは、毎年通常のツアーに加えてクリスマス・ツアーも行っており、年末しか家族に会う時間がないという筋金入りのハードワーカー。しかし2020年は、全5公演完売となった2月の日本ツアー以降はツアーが延期になり、仲が良いメンバー間の交流も激減してしまった。そんな中でも、スコット・ホーイング、ミッチ・グラッシ、カースティン・マルドナード、ケヴィン・オルソラ、マット・サリーの5人は、可能な限り精力的に活動し続けた。

 6月にステイホーム時間を楽しむためのカバーEP『アット・ホーム』をリリースし、リモートで撮影した収録曲のMVを立て続けに発表。10月には【ビルボード・ミュージック・アワード】の授賞式で、かつて彼らが全米ツアーの前座を務めたケリー・クラークソンとベテランのシーラ・Eと共に「ハイヤー・ラヴ」の圧巻のパフォーマンスを披露、そして11月は毎年恒例のクリスマス・アルバム『ウィー・ニード・ア・リトル・クリスマス』をリリースした。それに加えて日本のファンを驚かせたのが、Little Glee Monsterとの奇跡のようなコラボレーション曲「Dear My Friend feat. Pentatonix」。ペンタトニックスが日本語の曲を歌うのはこれが初ではないが、最早「発音が上手!」とかいうレベルではない完成度になっている。


 これだけの活動をしながら、いつ『ラッキー・ワンズ』の制作をしたのだろうと思われたかもしれないが、レコーディングは昨年のロックダウンが始まる1か月前には終わっていたという。多くのアーティスト達と同様に、彼らは状況をみて発売を延期したのだ。

 8月に今作からのファースト・シングルとして発表されたのは、5人全員が作曲に参加し、プロデューサーのヨハン・カールソンと共作した「ハッピー・ナウ」。軽快な手拍子とスコットのボーカルで始まって徐々にサウンドが拡大し、サビで最高の高揚感に到達するダンサブルでポジティブな曲だ。PVはスコット、ミッチ、カースティンのハーモニーに、マットのベースとケヴィンのヒューマンボックスがどのように合わさっているかがよく見える展開になっていて、全てを声で築き上げる彼らの技の凄さに圧倒される。この曲は、『ラッキー・ワンズ』のオープニング曲になったが、今後のコンサートの幕開けの曲にもなりそうである。


 続いて10月に、カースティンがマシュー・コーマ(ゼッド、カーリー・レイ・ジェプセン等のヒット曲をプロデュース)と共作し、リードを取った「ビー・マイ・アイズ」を発表。キャッチーでポップで愛らしいラブソングで、弦楽器を弾いたようなサウンドまでもが美声で作られており、実に見事だ。


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収録曲全てがヒット曲になるポテンシャル

 そして今年の2月頭にサード・シングルとして発表されたのが、アルバム・タイトル曲。スコットがLA出身のソングライター、リンディー・ロビンスとノルウェー出身のプロデューサー、マーティン・ショーリーと共作した曲で、テキサス州での学生時代の葛藤を語るところから始まって、ロサンゼルスに移住してペンタトニックスを結成して夢を実現した後、オリジナル・メンバーのアヴィ・カプランが脱退して存続の危機に陥ったことも含めてグループの歩みを振り返り、「僕達がどんなに遠くまで進んだかを見てみて」と、5人の至極のハーモニーで歌われる。

 スコットはこの曲について、インスタグラム上でこうコメントした。

「このオリジナル・アルバムは僕達の心で、魂で、物語だ。そして僕はこのアルバム・タイトル曲が、僕が書いていた時と同じように君達の心を揺さぶるものであることを願っている。聴きながら、君の人生において“ラッキー”と感じられる人や、物や、時間に思いを馳せてみてほしい。宝くじに当選したという幸運でもいいし、君が今息をしていて、生きているという幸運でもいいから。」

 『ラッキー・ワンズ』を締め括る曲で、今まで彼らと共に歩んできたファンにとっても特別な一曲になっていると思う。


 最新シングルの「コーヒー・イン・ベッド」でも、5人は度肝を抜くパフォーマンスを披露。『ペンタトニックス』のリリース時に、スコットは「僕達は色々なこと(【グラミー賞】受賞や全米No.1アルバムなど)を達成してきたけど、ラジオで曲を流すのは『無理だ』って言われ続けてきた。『ラジオでかかる曲は、ノイジーなインストゥルメンタルか、シンセサイザーが入っている曲だから』って。でも僕達は、アカペラ曲でもラジオで流れるってことを証明したい」と熱く語っていたのだが、まだペンタトニックスを知らないリスナーがこの曲をラジオで耳にしたら、シンセとベースとドラムマシーンが使われていると思ってしまうだろう。ミッチのファルセット・ヴォーカルも超人的で、あらゆる面で凄すぎて耳を疑う、彼らの革新性を究極まで磨き上げた一曲だ。


 他の7曲も全て、各メンバーが様々なプロデューサー達と組んで共作していて、前オリジナル作よりもずっと大人になった彼らのリアルな物語が赤裸々に語られている。カースティン共作の爽やかな「ラヴ・ミー・ウェン・アイ・ドント」、レゲエ調の楽しいサウンドとシリアスな歌詞が対を成す、カースティンとケヴィンによる「リトル・スペース」、ミッチの歌声が彼らのハーモニーとビートと合わさって化学反応を起こしているドラマチックな「サイド」、ミッチとスコットとマットの共作で、米国メタル・バンドのシステム・オブ・ア・ダウンのヒット曲「B.Y.O.B.」のサビを引用した斬新な「ボード」、カースティンとマットによる幻想的な雰囲気の「エグジット・サインズ」、アカペラで華麗にEDMを作り上げているミッチ共作の「ネヴァー・ゴナ・クライ・アゲイン」、ピアノとチェロを織り込んで、ミュージカルが大好きなカースティンのカラーが出ている壮大な「イッツ・ディファレント・ナウ」と、実に多種多様なサウンドを取り揃え、全てがヒット曲になるポテンシャルを持っている。アルバム全体の緩急の付け方も完璧で、最後まで一瞬たりとも飽きさせない。


 今年結成10年を迎えるペンタトニックスは、『ラッキー・ワンズ』で確実に次のステージに上がった。彼らはアカペラだけでなく、ポップというジャンルをも超越した未来型の音楽を発明し、創造している。できればアルバムを通して、ヘッドフォンで聴いてみてほしい。前代未聞の音楽体験ができることだろう。

 今作からのシングル曲はまだラジオ・ヒットにはなっておらず、YouTubeのコメント欄で多くのファンがオリジナル曲が正当に評価されていないとの指摘をしているが、ラジオは勿論、来年度の【グラミー賞】でも、唯一無二のペンタトニックスが彼らに相応しい評価を手にすることを願っている。それだけの傑作かつ後世に残る名盤が、2021年、ここに誕生した。

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