大塚愛【大塚愛 LOVE LETTER Tour 2009 ～チャンネル消して愛ちゃん寝る!～】

Special

大塚愛

2009.05.03（日）at Zepp Tokyo｜セットリスト

　誰かの強烈にビッグボリュームなイビキ。やがてそのノイズはリズムを刻みだし、そのままオープニングチューン『LIFE - LOVE CiRCLE』のイントロへと繋がって、軽快に大塚愛による貴重なライブハウスショーは幕を開けた。まるで前もって打ち合わせしていたかのように一寸狂わぬタイミングで2500人が“ま～る愛～”を両手で作り出し、会場の気持ちがひとつになったところで、思いっきりBPMを上げたロックテイスト溢れる『CHU-LIP』を飛び跳ねながら歌い出す彼女とオーディエンス。徐々にボリュームを上げていく「なぞいでんし♪」に、徐々に会場のテンションも上がっていき、最後は大フィーバー状態で「チューリップの恋模様♪」をスパーク気味に歌い上げるといった、オリジナルとは似ても似付かない展開にみんな、新鮮な興奮を覚える。

　「こんにちは、大塚愛で～す！大塚愛 LOVE LETTER Tour 2009 ～チャンネル消して愛ちゃん寝る!～ Zepp Tokyo 最終日！ごめんな、今日長いで」と悪い笑顔を浮かべる大塚さん（笑）。そして隠れ名曲『空とくじら』を、大塚愛の楽曲群の中でも1,2を争うであろうメッセージソングを大切に大切に響かせていく。どうか気づいて―――、子供の世代に向けて歌われたこの楽曲を披露した直後、奇跡的にも僕の後ろの席から赤ちゃんの泣く声が聞こえてきて、鳥肌が立った。続いてライブは、液体の中で男女が交わっているかのような、一枚のシーツの中の世界だけを描いたかのような、心も体も超密着系ソングを連発するブロックへ。大塚愛純度の高い濃厚なナンバーを楽しそうに、その体を揺らしながら歌い上げていく。な～んて心地良いのでしょう。心地良すぎて、ほんと、なんか、溶ける。

　「最終日やし、喋っていい？」から始まったロングタイムMC。今回のツアーの裏話、ツアーで愛用していた黒ひげ危機一髪での罰ゲームについての話とか、初めて経験したスノボの話とかを井戸端会議のテンションで聴かせる大塚さん。そして「飲まんでも飲んだふりできるか!?」というコールと共にようやく『バイバイ』でライブ再開（笑）。例のCMのセリフ同様、彼女の瑞々しい声がアメリカンロック然とした、青空の似合うサウンドと共に会場を包み込んでいく。その後も徐々にエモーションが増していく大塚愛式ミニマルミュージック『360゜』を、ステージをくるくると駆け回りながら披露したり、日本中に溢れる脳天気ポジティブソングの更に上の次元を表現している『ド☆ポジティヴ』を、とんでもない疾走感の中で熱唱したりと、バラエティにぶっ飛び過ぎている大塚ワールドを高いテンションで見せ付けていく彼女と、それに翻弄されながらも同じくテンションを上げていくオーディエンス。

　そして、絶好のタイミングでぶっ放されるポンポンポンポンの嵐。場所がライブハウスということもあって、いつモッシュやダイブが起きてもおかしくない異様なムードの中でとにかくハッピーに飛び跳ね続ける、おバカな皆さん（笑）。続く『Happy Days』は、更に皆さんのジャンプ力が急成長し、気付いたらステージには7,8人の黒子も堂々と姿を現して一緒にジャンプ。とんでもない熱気が会場を埋め尽くしたところで、おそらくこの楽曲のためにライブハウスツアーが組まれたのではないかと思われるほどの、大塚愛史上最も生命力に充ち満ちた『ロケットスニーカー』が満を持して披露される。ここにいる誰もがその腕を振り上げて満面の笑みでこの瞬間を堪能し、バンドも彼女のボーカルも気持ちが溢れまくった、ソウルの塊としてぶっ放されていくこの感じ。長らく試行錯誤を続けてきたロケスニの理想型がようやくここに完成を見せた。そして「私のこと愛してる？」「愛してる！」と相思相愛をしっかり確認して、更にはみんなとの記念撮影もバッチリ済ましたところで、楽曲は“大塚愛 feat.Zepp Tokyo（最終日）の皆さん”による『愛』へ。真っ白な光に包まれた世界の中心で、両の手を大きく広げる彼女。その腕に収まりきらないほどの愛のうたが驚くほど美しく響き渡り、その声の数だけ僕らの心を文字通りの“愛”が埋め尽くした。

　「だ～いすき～よ～♪」と歌いながら再びステージに戻ってきた彼女は、客席に投げキッスの出血大量サービス（笑）。そして『黒毛和牛上塩タン焼680円』は『BLACK HAIR J BEEF SALT TONGUE BURN ＄6.95（2009.3.1）』となって、とんでもないスピードと熱でもって放たれていく。もはや色気もへったくれもないパンクロックと化したソレに熱狂する僕ら。そしてこのタイミングで、この密着度で披露される『さくらんぼ』は、それはもうアレコレ言うまでもなく当然えらい盛り上がりようで、こちらも見事なまでに美しい大合唱。続いて、やたらテンションの高いおっさんがルーレットと共に登場し、そのルーレットでバンドメンバーがそれぞれ別のパートを担当することになり、大塚さんは嫌々『プリントクラブ』なる意味不明な曲を歌わされることに。やけくそでシャウトしまくる彼女、とてもステキでした。そしてみんな元の持ち場に戻ったところで、まるでもう一度オープニングから始まったかのような爽快なエモーションでもって『未来タクシー』をお届け。これまた綺麗に揺れるみんなの腕。そして、アサヒ「Slat（すらっと）」のCMを生再現したり、散々悪ふざけした後（笑）彼女がオーラスに歌い始めたのは「ぼ～くはいま～ゆ～めたびの～なか～♪」『ユメクイ』であった。明日からも続いていく山あり谷ありの冒険を笑顔で乗り越えていくための音楽が、今日一番の開放感を生み出しながら、終わらない情熱を、消えない君と僕との繋がりを、強く強くこの胸に感じさせる。

　それでもワガママな僕らは「もう一回！もう一回！」とおねだりを続け、困った大塚さんはバンドメンバーと急遽打ち合わせ。そして今日何度目になるか分からない「愛してる？」「愛してる！」「私も愛してま～す！」を繰り広げ、残った気力と体力の全部でもってみんなと『フレンジャー』を堪能。全身全霊の「ウ～～～～～～～ファイッ！」に、感動と興奮の渦の中でバッチリ決まった「ダ！ダ！ダ！ダ～～～～～～～～～～～～～ッ！！」ラストはみんなでハイジャンプを決めて……終わりか思いきや、鳴り止まない「もう一回！」コールに再度打ち合わせスタート。さっきよりちょっと長め（笑）。そして「愛して……以下略。を経て、今夜2度目の『ロケットスニーカー』！うん、やっぱり最後はこの楽曲がいい。爆発する地球サイズの生命力。今この瞬間確かに僕らはもう間違いなく、一点の曇りもなく「生きてるぞぉぉぉぉぉ～～～～～～！！！」を全身全霊に感じながら、生きていた。