Billboard JAPAN


Special

アリル 『Wait For You』インタビュー

アリル シングル『Wait For You feat. KURO from HOME MADE 家族』 インタビュー

 昨年ミニアルバムでメジャーデビューを果たした、平成元年生まれの大阪出身女性シンガー アリル(注1)が初登場!

 デビューに至るまでの苦悩、思い描いていたものとは違ったメジャーシーン、「初めて買ったCDがアリル、という小学生に出逢う」という心あたたまるエピソード。さらに、23歳ならではの葛藤や今後について etc...。彼女の明るさや健気さが反映されたインタビューとなっています。

デビューに至るまでの苦悩、空白の2年間

--まず、音楽を好きになったきっかけを教えて頂けますか?

インタビュー写真

アリル:家族が音楽好きだったので、物心ついたときから常に音楽が流れていて、音楽が側にあることが当たり前だったんです。目立ちたがりだったので、小さい頃はちょっとした段差があれば上って歌ったり踊ったりしてましたね(笑)。で、小学生のときにキッズゴスペルクワイアのレッスンを受けることになって、そこから漠然と「歌手になりたい」と思い始めたんです。100人くらいで一斉に声を出したとき、泣きそうになるくらい本当に感動して!

--子どもの頃はどんな音楽を聴いてました?

アリル:父親から「チャカ・カーンとアレサ・フランクリンは神やで!」ってずっとすり込まれてきたので、ソウルやR&Bを聴いてましたね。モーニング娘。とか、安室奈美恵ちゃんとかSPEEDも好きでしたけど、一番影響を受けたのはR&Bとかソウルミュージック。とにかく洋楽が大好きでした。

--プロフィールには“中学3年生で初めてステージに立った”と書いてありますが。

アリル:ある日、父親から「そんなに歌うことが好きなら出てみたら~?」って軽い感じで、シンガーコンテストの応募ハガキをもらったんです。応募した人は全員出場できるようなイベントだったので、次の日に記入してポストに入れて。それで初めてステージに立ったんですけど、会場でイベンターの人と繋がることもできて、高校生になってからシンガーとして人前でライブをさせて頂けるようになったんです。

--そして、大阪のクラブ系アーティストコンテストでNo.1に選出されたり、RYUKYUDISKOやHOME MADE 家族の作品へ参加。順風満帆に進んできたように見えますけど、挫折などはなかったんですか?

インタビュー写真

アリル:急に前に進んでいる感じが無くなった時期とか、ありましたね。最初は初めてのことだらけだから、何をするにも毎回新鮮で、少しずつだけど前に進んでいる感じがしていたんです。だけど、ある日突然、周りの景色もあまり変わらなくなって、急に止まってしまったような気がして。声の調子が悪くなったことも重なって、前に進んでいないどころか、後ろに下がってるんちゃうん!? っていう時期が2年くらい続きました。周りも「最初は勢いある子だったのに最近どうしちゃったの?」みたいな雰囲気になったりして、ひたすら悔しい日々というか、手ごたえもないし、かといって何もしないわけにはいかないし。その2年間は何をして過ごしていたか思い出せないくらい空白だった。

--それはいつ頃ですか?

アリル:高校を卒業した後くらいですかね。人との関わりすら絶ちたくなるような時期で、友達が「元気?音楽頑張ってる?」って気に掛けてくれることすら、しんどく感じてしまうというか。家族とも、前まではみんなで音楽番組を観たり、音楽の話しで盛り上がっていたのに、音楽番組を観ること、音楽を聴くことすらも嫌になってしまったんです。そこからどうやって立ち直ったのかも覚えていないくらい、ただただ必死でした。ボーっとしていたような、忙しかったような。何も考えていないようで、ずーっと頭の中では何かがグルグル巡っている感じというか。

--そうした苦悩を経て、2011年にソロとしてメジャーデビューを果たすわけですけど、デビューが決まったときの心境は如何でした?

アリル:デビュー前からプロの方とお仕事させて頂いていましたけど、いざ自分の作品を作ることになったときは、大変だと感じることの方が多かったです。「やったー!」って無邪気に喜ぶよりも、今まで感じていなかったプレッシャーや責任感みたいなものが一気に増えたので、悩んだり考えることの方が多くなりましたね。

思い描いていたものとは違ったメジャーシーン

--また、今年の4月からは全国のイオンモールを中心に回るインストアライブツアー(注2)を開催。電気自動車でマネージャーと全国各地を走り回っていましたが、そこで感じたことなどありますか?

インタビュー写真

アリル:自分が今まで思い描いていたメジャーでの活動って、なんていうか、今回のツアーとは間逆のものだったんですよね。もっとキラキラしているというか、歌だけに専念していきます!みたいな。だけど、実際はデビューしてからの方が大変だった。デビューすれば自然に広まっていくと勘違いしていたけど、色々と考えたり動いていかないと人には届かないんだなって実感しましたね。ただ、ツアー自体は凄く楽しいです! 偶然通りかかった人が、たまたま私の曲を聴いて「いいな」と思ってくれて、「感動しました」とか「応援してます」っていう有難い言葉を掛けてくれる。東京でじっとしていたら、こんなことは体験できなかったと思います。

--待っているだけじゃ駄目ってことですよね。

アリル:行動に移さないと何も動き出さないじゃないですか。インディーズだろうがメジャーだろうが、自分たちで動いて知ってもらおうと努力しないと、人って巻き込めないんだなって改めて感じましたね。どんな環境にいても、やることは一緒というか。本当に届けたいと思うなら、直接みんなに会いに行くべきだなって。

--何か思い出に残っているエピソードはあります?

アリル:CD売り場の周りで「お金足りるかなぁ?」って感じでウロウロしていた小学生くらいの子たちが、悩んだあげくCDを買ってくれて、後でブログに「自分の意思で初めてCDを買いました」ってコメントをくれたり。きっとお小遣いもそこまで多くないと思うんですよ。それでも私のCDを買ってくれて、その子にとって“初めて買ったCD”になれた。かなり凄いことだなって、泣きそうになるくらい嬉しかったです。

--Twitterを見る限り、大荷物で移動したり、ステージの設営も自ら行ったりと大変そうですけど、挫けそうになることはなかったですか?

アリル:やっぱり悔しい思いもいっぱいしました。でも、そういうときは、帰るときにこの人の態度が変わっているくらいのライブをやろう!って気持ちで挑んでましたね。

--その意気込み素敵です。また、6月13日には待望の1stシングル『Wait For You feat. KURO from HOME MADE 家族』をリリースしましたけど、アリルさんって声が特徴的ですよね。

アリル:昔は自分の声が凄く嫌いだったんですよ。歌声を録音したテープを聴いても「変な声~(泣)」ってなってた。もっとハスキーで黒人さんみたいな声に憧れていたんですけど、周りに「あまり聴いたことのない声だよな」とか言われると、徐々にそれが快感になっていきましたね。

--この曲にはどんな想いが込められているんでしょう?

アリル:今までの私のラブソングは過去の恋愛を振り返ったり、切ない気持ちになる曲が多かったんです。だけど、恋愛で一番幸せなときってラブラブな時期じゃないですか。なのに、私は何で今までその幸せな部分を取り上げてこなかったんだろうと思って。で、『Wait for me』(注3)で描かれている男女の関係性にとても憧れていたし、大好きな曲なので、『Wait for me』のアンサーソングとしてこの曲を作ったんです。過去の幸せを振り返るよりも、今の幸せを噛み締めて生きていく方が何倍も人生得する気がするので、そんな想いを込めてストレートに書きました。

--心が穏やかになる曲ですよね。

アリル:最初は恋人に贈るラブソングとして作ったけど、ツアーで歌っていくうちに、お客さんとの関係性にも似ているなって感じるようになったんです。聴いてくれる皆さんがいるから、私も歌っていて楽しいし幸せになれる。歌詞に「君がいれば強くなれる」「笑い合えれば ここがBeautiful World」っていうフレーズがありますけど、各地で歌っていて「まさにこの空間やん! ここがBeautiful Worldやん!」って思うんです。これも一種の愛情というか、自分と聴いてくれる人との間に生まれた絆なのかなぁって。

アリルは意外に根暗? 23歳は“中途半端”な年齢

--一方で、カップリング曲『サヨナラからの…』『If~もしも二人が~』は悲しい失恋ソングに仕上がっています。

インタビュー写真

アリル:さらに今の幸せを大事にしようと思ってもらえるように、『Wait For You feat. KURO from HOME MADE 家族』とは正反対の2曲を入れたんです。ただ“幸せな曲”と“切ない曲”ではなくて、段階として聴いてもらえたら嬉しいですね。ただ、今回のシングルは全体を通して聴いたときに自分でもビックリしました。恋愛ってこんなにも人の感情を、マイナスにもプラスにもするものなんだなぁって。そりゃ体力も使うよなぁ、みんな凄いなぁって。

--何で人事なんですか(笑)。あと、今日お話しを伺っていて思いましたけど、アリルさんってかなり明るい方ですよね。

アリル:アハハハハハハ! でも、意外と1人になると根暗というか、静か~な感じですよ(笑)。人がいると果てしなくテンション高いですけど、ネガティブなことも考えたりするので、たぶんギャップがあると思います。自分でもちょっとビックリするときがあるくらい。

--どんな学生時代を送ってました?

アリル:えーっと、勉強は不真面目でしたね(笑)。でも、体育祭とかのイベント事はクラスでもTOP3に入るくらいの張り切りようでした。ただ、今とそんなに精神年齢は変わっていないかもなぁ。むしろ幼くなっている気がします。昔はもっと背伸びしていたと思うので。年齢を重ねるごとに、よりナチュラルでいたいって気持ちが強くなってきましたね。

--私もアリルさんと同じ23歳なんですけど、若さ故に焦ることなどありません?

アリル:この年代って中途半端じゃありません? 子ども扱いもされるし、大人扱いもされるし。そこで戸惑うというか、どっちにいたらいいのか分からなくなるときはありますね。自分の発言や意見に対しても「あれ?これは背伸びしてるんかなぁ?」「いや、等身大で言っているような気もするしなぁ」って一人で迷ったりして、ややこしいです。周りが自分をどれくらいだと思っているのかも分からないですしね。大人として見られているのか、子どもとして扱われているのか。まだまだ本当にグラグラしています。

--ただ、アリルさんが一生懸命自分の足で歌を届けている姿は、同世代の人たちにとっても励みになると思います。

アリル:自分が好きでやっていることで、そう感じてくれる人がいるなら、それはとても幸せなことですね。音楽って、無いと死ぬものではないじゃないですか。食料や水じゃないので。だけど、その中で少しでも「あの人が頑張っているから、私も頑張ろう」って気持ちに繋げることができるのであれば、もうそれは最高ですね。一番広めたい感情です。

--女性シンガーが大勢いる中で、アリルさんにしかない良さはどこだと思いますか?

アリル:正直、私は流行りに敏感で先端を走っているようなタイプではないんですよね。昔からそういうことに対して疎い方でしたし。ただ、そのぶん無理をして流れについて行こうとしない、自然体でいられるところがある。だから、ライブも見た目の派手さより、もっと情的な部分でお客さんと繋がっていけたらいいと思っているんです。今回のフリーライブで更に感じたことですけど、もっともっと身近な存在として歌を届けていきたい。友達と電話した後にやる気が出ることってあるじゃないですか? そんなアーティストになりたいんです。そして、その規模をどんどん広めていきたい。

--では、今後挑戦してみたいことはありますか?

アリル:早くギター1本でライブができるようになりたいです。今までリリースしてきた音源を、弾き語りのアコースティックバージョンで歌えたらいいですね。目の行き届く広さの中で、緊張感を分け合いながらライブをやりたいです!

アリル KURO「Wait For You feat.KURO from HOME MADE 家族」

Wait For You feat.KURO from HOME MADE 家族

2012/06/13 RELEASE
KSCL-2043 ¥ 1,282(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Wait For You feat.KURO from HOME MADE 家族
  2. 02.サヨナラからの…
  3. 03.If ~もしも二人が~

関連キーワード

TAG