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<インタビュー>ちゃんみながニューシングル『Angel』で描いた、救いのない天使の物語



インタビュー

 昨年のホールツアー【THE PRINCESS PROJECT 4】を全公演ソールドアウトさせ、リリースした楽曲はサブスクリプションでも高い再生回数を誇り、特に多くの女性リスナーから強い支持とシンパシーを集めるちゃんみな。彼女が新作となるシングル『Angel』をリリースする。

 これまでにも解釈や謎解きをリスナーに与えるような作品を作ってきた彼女だが、今回のリード曲「Angel」は、聴く者にそれぞれの理解を求め、それぞれの答えを出させることができる、非常に解釈の幅が広い作品となった。リスナーの感情を様々な方向に揺さぶり、イマジネーションを刺激し、挑発するような作品を、彼女はなぜ作り出したのだろうか。

Text by 高木"JET"晋一郎

いわば、この曲は発狂です(笑)

――前作『note-book -Me.-』と『note-book-u.-』は2月にリリースされましたが、その直後からコロナ禍が深刻化し、ステイホームを余儀なくされました。ちゃんみなさんはその間、どのように過ごされていましたか?

私もステイホームでしたね。始めたことと言えばランニング。メンタルが必ずしも一定なタイプではないので、邪念を飛ばすために走ってたんですけど、だんだん走ることが自分の中でルーティンになってきて、いまも走ってます。ただ、緊急事態宣言中にやってたのはそれぐらいで、他のことはほとんどしてませんでした。

――何かをクリエイトしたりは?

全く。あまり何かを考えたくなかったし、感情を揺さぶられたくなかったんですよね。だから映画も観ないし、音楽もほとんど聴かずにいました。

――感情を揺さぶられたところで、行動に移すのは難しい時期でしたからね。

まさにそこですね。だから表現したり、クリエーションしたりは全くなかったです。体作りぐらいで。でも、デビューしてからの3年間ぐらいはずっと働きっぱなしだったので、改めて自分自身のフィジカルな部分に目を向けるのもいいのかなと思ったし、それはスゴくいい機会と結果になりましたね。心のデトックスにもなったというか。



――メンタルも浄化されたと。

無駄な思考とか、本当は無駄だったものが分かったり、何が欲しくて、何が苦手で、何を求めていて……みたいなことがクリアになった。だから、余計な執着とかから抜け出せた感じですね。服も半分ぐらいになるまで、物理的なデトックスもして。家中空っぽです(笑)

――それは今作の制作に入る前ですか?

そうですね。整理やデトックスをしつつ、この作品を作っていったというか。だから、このシングルがリリースされて、そこでやっとデトックスが完成するのかなって。

――そして今回のシングル『Angel』ですが、リード曲の「Angel」は非常にインタビューが難しい作品だと思いました。

でしょ?(笑)

――難解な言葉やアブストラクトな世界観によるインタビューの難しさというより、作品全体として相反しあう言葉が多く、また共感の余地が非常に少ないので、ロジカルな理解が本当に難しくて。だから「こういう風に感じました」ということさえ言語化するのが難しく、その部分でインタビューが難しいと感じました。

まさに(拍手)。

――どういうタイプの拍手ですか(笑)。

自分でも何を言ってるのかが分からないんですよ、この「Angel」って。自分の中でも整理ができてないし、整理できていないまま歌詞を書いてるから、私自身も説明ができない。「この作品の意味は」ってもし訊かれたら「分かりません」としか答えられない(笑)。どこかで「自分の想定内を突破するものがアート」っていう話を聞いたんですけど、この作品はそういうイメージですね。

――自分の意図を超えた部分で作品が成り立っていると。

今までの作品は基本的に監督目線で作っていたんですけど、「Angel」はプレイヤーの視点なんですよね。



ちゃんみな – Angel (Official Music Video)


――解決や結果が出た先での作詞のような“ストーリーの外側”にいればそれを俯瞰して見ることができますが、“ストーリーの内側”にいると視点はその人の主観になり、整理は難しいですね。

これまでは“それまでにあった経験や事柄”に対するメッセージや見解、感情を作品に落とし込むことが多かったんですけど、この時はそのストーリーの中にいたんですよね。台風の目の中にいるような感じで、理解も整理もできないまま歌詞を書いたから、こういう構成になったんだと思います。いわば、この曲は発狂です(笑)。発狂してる時って何を言ってるのか分からなくなるし、ホントにそういう曲だと思う。書いてて楽しかったけど(笑)。

――発狂というと言葉はキツイけれども、他人のことって説明できるけど、こと自分に関しては、絶対に言葉で説明しきれないですよね。だから、その“説明しきれなさ”もそのまま書いたというのがこの曲の印象でした。

その意味でも聴く人にとっては本当に不親切な構成なので、でき上がってから歌詞を修正しようかとも思ったんですけど、やっぱりしないほうがいいなって。

――再構築はしなかったんですね。

そういった感情もあまり隠さなくていいかなと思ったし、これも自分の一部として残しておきたいなって。それに、この曲に関してはこのぐちゃぐちゃ感が“言葉にならないもの”を伝えてくれるだろうなと思ったんですよね。

――言葉にしたり名前をつけるということは、対象となる事象を掴みやすくするけど、同時にそこからこぼれ落ちるものも生まれてしまいますね。



そうそう。言葉にならないもの、言葉にしてしまうと伝わらないものがたしかにあるから、正確に伝わるよりも“ニュアンス”だけでも伝わればいいかなって。頭の中のごちゃごちゃをそのまま出してるから、リスナーにはその節々だけでも掴んで貰えれば、それだけで嬉しいなって。

――その意味でも、この曲の中のニュアンスやキーワードを、リスナーが自分の中で繋げるような曲ですよね。だから、100人いれば100通りの解釈がこの曲には生まれるような気がします。

“共感”はしてもらえるような気がするんですよね。「こういう感覚って分かる」みたいな。私の友達に聴かせて「意味分かんないよね?」って訊いたら、「いや分かるよ」ってその人は言ってくれて。

――そのお友達がそうだったように、ぐちゃぐちゃな内容であっても、「ちゃんみなのリスナーはこの作品を咀嚼して、それぞれに消化することができる」という自信と信頼もあるのかなって。

そうですね。挑戦でもあるし、分かってくれるだろうって信じてます。


“堕天使”が一つのテーマ

――「Angel」を含め、このシングルは全体を通して“くっきりしない”というイメージを受けました。それはピントがずれてるという意味ではなくて、明快ではない部分や曖昧な部分をあえて作ることで、だからこそ表現できる感情を形にしてるんだなと。

気づいたらそうなってましたね。そうすることが今回は心地よかったし、満足いく形でした。分かりやすいのは「Very Nice To Meet You」じゃないかな。

――個人的な印象ですが、「Angel」の“理解できない”とは違って、「Very Nice To Meet You」は“相容れない”という意味で自分には分からないと感じました。

たしかに男性は怖いと感じる曲かも知れないですね。でも、私的には「楽しい!」って感じでしたけど(笑)。自分自身に一番感情が近い曲だと思います。この曲にあるように、自分のパートナーにちょっかいを出そうとしたり、狙ってることが分かる人に出会うと、もの凄く不愉快じゃないですか。本当に嫌な気持ちになる瞬間なんだけど、そこでその相手に「出会えて嬉しいわ」って言いたいと感じる女性ってけっこういると思うんですよね。

――それって嫉妬やマウンティングとも近い感情だと思うし、そのドロッとした感情に精神的なダメージを受けました(笑)。

このシングルの曲は、最初の「Angel」からラストの「As Hell」まで、主人公が段階を追って堕ちていってるんですよね。「Angel」の主人公は、自分が悪魔になってしまうような道を進んでること、自分が本当は悪魔なのかもしれないってことに気づいてないんです。だから自分のことを「Angel」って言えるんですよ。でも“Very Nice To Meet You”っていう言葉のように、言葉遣い自体はお淑やかなんだけど、その言葉の裏側には嫉妬みたいな悪魔的な部分が垣間見られるし、徐々に自分の中の悪魔が形になっていくんですよね。だから今回は“堕天使”が一つのテーマですね。

――「Rainy Friday」もその一部にあると。

この曲を含めて、全体に通底してるイメージは“雨”なんですよね。どの曲にも雨を象徴するものが散りばめられていて。雨天は神の不在と言われてるように、それが一つのテーマになってます。それから「Rainy Friday」はリスナーに考察して欲しい曲ですね。私の中ではしっかりした物語があるんだけど、『名探偵コナン』を観すぎたせいか、謎をかけるような内容になってます(笑)。ヒントは色んな場所に込められているので、それを謎解きしてほしいですね。



――そして最後の「As Hell」ですが、ついに地獄に落ちてしまいます。しかし、この主人公は地獄も心地よく感じてしまう。

なんでこんなに“明確な救い”がない内容になったのか、自分でも分からないんですよね。こういう結末にしようとは制作当初は考えてなかったのに、気づいたら救いがなくなっていて……なんでなんですかね(笑)。でも、一度落ちたらとことんまで落ちていって、そこから立ち直るっていうのが私自身の回復法としてあるので、そういうマインドや状況が作品に反映されたのかなって。

――この曲の「最期の女性のように」という歌詞が興味深く感じました。最後の人になるという事実ではなく、“ように”という仮定を要求するという。

最後の女性になる人って、“最後の女性のような扱い”を受けないですよね。

――そうか。最後の女性になるのは結果だから、進行形の状態ではそれに気づかないと。

だから、「あなたの人生の最後の女性のように扱って欲しい」というのが一番の女性の願いだと思うんですよね。それは性(=女性としての人生)を楽しむ、という意味も含めて。それをはっきり言ったんですよね。

――ただ、その要求は例えば「Make love」のような言葉ではなく、「F**k me」という非常に行儀の悪い表現でなされますね。

この曲のモチーフになっているのは映画の『エクソシスト』なんですよね。その主人公のリーガンのセリフが「F**k me」で、とても印象的なんです。

――リーガンは悪魔に取り憑かれますが、リーガンに全く瑕疵はないのに、悪魔に取り憑かれるという非常に理不尽な目に遭うわけですが、そこに自分を重ね合わせたと。

自分自身が理不尽を感じてるからじゃないですかね。自分は悪いことをしていないのに災難に遭うことって意外とあるので。

――その意味でも非常に様々な感情が込められた作品ですが、サウンドはポップな要素が強いですね。

メッセージがハードな分、ポップな音色で聴かせるようにバランスを取ったのかもしれませんね。天秤座なので(笑)。

――そして今作の初回限定盤には、昨年12月に人見記念講堂で行われた【THE PRINCESS PROJECT 4】のライブの模様が収録されます。

もともと全2公演のホールツアーだったんですけど、全公演即ソールドアウトできて追加公演もできたのはスゴく嬉しかったですね。今はコロナの状況下でライブはしづらいですけど、昨年より前に進んでいるので、その姿をいつかステージで見せたいです。

――【THE PRINCESS PROJECT 4】で感じたことは何でしょうか?

音楽制作は自慰行為で、ライブはセックスだということですね。ライブはやっぱり相手がいるからこそ成り立つし、それでこその快感があるなって。それに、やっぱり私のライブはオーディエンスの念がスゴいなって。合唱してくれる声や声援から、ホントに念を感じるし、下手に神社にいくよりも、よっぽどパワースポットに行った心地になるじゃないかなって(笑)。



ちゃんみな - Call (@ 昭和女子大学人見記念講堂, 2019.12.12 "THE PRINCESS PROJECT 4")


――インタビューの前半で、このシングルがリリースされてデトックスが完成すると仰られましたが、その先はどのようなものになりそうですか?

今作はまだ自分の内側にあるものをリリースしたというイメージなので、それがデトックスされた先の作品は変わると思いますね。具体的にどうなるかは見えてないけど、100%変わるんじゃないかなって思ってます。リリース形態も変わるかも。本当に『名探偵コナン』にハマってるので、“謎を解かないと音源が聴けない”みたいな作品を出すかも知れない(笑)。

――インスパイアとその結果がどうかしてます(笑)。

それは冗談としても、この作品で大きな壁を乗り越えたと思うし、思考も変わっているはずなんで、自分としてもこの先に何が待っているのか、スゴく楽しみですね。



Interview by 高木"JET"晋一郎
Photos by Yuma Totsuka

ちゃんみな「Angel」

Angel

2020/09/09 RELEASE
WPCL-13226 ¥ 1,430(税込)

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Disc01
  1. 01.Angel
  2. 02.Very Nice To Meet You
  3. 03.Rainy Friday
  4. 04.As Hell

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