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ニュージーランドの国民的ロックバンドSIX60 初来日インタビュー



SIX60インタビュー

 母国ニュージーランドを含むオセアニア地域で圧倒的な人気を誇るモンスターバンドSIX60(シックスシックスティ)が来日した。SIX60は、この秋、日本を沸かせた【ラグビーワールドカップ2019】で3位という好成績を残したニュージーランドの代表チーム<オールブラックス>と交流が深く、チームとサポーターを繋ぐ #BACKBLACK というキャンペーンに楽曲提供を提供したり、オールブラックスとともに各地でイベント出演したりして、現地のファンと密着してきた。【ワールドカップ】開催中には、世界屈指のラグビーチームとともに、彼らも来日し、日本各地で日本サポーターと交流を深めていった。

 そんな彼らは、これまで自主レーベルの<Massive Entertainment>から2枚のアルバムを発表していたが、約4年ぶりとなる最新アルバム『SIX60』は<Epic Records>から共同リリース(日本では現在配信のみ)。今年の2月には5万人規模のウェスタン・スプリングス・スタジアムでニュージーランド人アーティストとして初のライブを開催し、チケットは即完売。その反響を受けて、来年2月に行われる同会場でのライブもすでに完売している。今回、大盛況となった初来日ショーケースライブの翌日に、ニュージーランドきっての大型バンドに最新アルバムと自身の音楽について語ってもらった。

左から:ジャイ・フレーザー(gt)、クリス・マック(bass, syn)、マティウ・ウォルターズ(vo, gt)、イライ・パーウェイ(dr)、マーロン・ジャーブス(syn, samples)

――マティウとイライはオールブラックスに選出されたホアニ・マテンガ選手と大学で一緒にプレイしていたそうで、やっぱり体つきもがっしりしてますね。

ジャイ&クリス:俺たちもラグビーやってたんだけどな~(笑)。

全員:ハハハハ(笑)!

ジャイ:サッカーをやってたってことにしておいてよ(笑)。

――失礼しました(笑)。初来日ショーケースライブではショー中にオーディエンスからハカを贈られたそうですが、どういう経緯で実現したのでしょうか?

マティウ:ライブが始まる前にファンと話したんだよ。ニュージーランドには、1,000くらいのハカがあるんだけど、カマテ(Ka Mate)と呼ばれるオールブラックスが使っている、ニュージーランド国民なら全員が知っているくらい有名なハカがあって、そのフレーズが入っている曲(「Don’t Forget Your Roots」のマオリ語バージョン「Kia Mau Ki Tō Ūkaipō」)がプレイされた時に始まったんだ。日本人のファンも含めてみんな盛り上がってくれたよ。



――そうだったんですか。今年の2月にはニュージーランド人として初のスタジアム公演を行い、来年のスタジアム公演もすでにソールドアウトしています。昨晩の会場とスタジアムでは会場の大きさに天と地ほどの差がありますが、会場の大きさに合わせてどうプレイを変えているのでしょうか?

マティウ:どんな会場でも同じような迫力で届けたいと思ってる。でも無意識に変えているのかも。スタジアムの時はアットホームな雰囲気を作りたいって思うし、逆に小さい会場の時はスタジアム級に感じさせたいって思っていて、それは音量とかの問題じゃなくて、気持ちの面で違う。

――新しいアルバム『SIX60』が出ますが、これまで出した2枚のアルバム名も『SIX60』ですよね。それには何か理由があるのですか?

マティウ:活動初期の頃からファンとのコラボレーションを視野に入れていて、正直、タイトルはファンに委ねているんだ。資料的な部分では『SIX60』と名付けているけど、俺達からすれば無名のアルバムなんだよ。1枚目は通称『ゴールド』、2枚目は『カラーズ』と呼ばれていて、次はなんだろう? 3枚目だから『No.3』になるのかな(笑)?

――通称名はアルバムのジャケットから来ているのですか?

マティウ:そうだよ。

――だとすると『オレンジ&ブラック』になるのでは?

全員:ハハハ(笑)。

マティウ:そもそもSIX60っていうバンド名もファンから名付けられたものなんだよ。元々、660ボーイズっていう名前でやってたんだ。

マーロン:それにジャンルにも世代にも縛られたくなくて、あえてアルバムにタイトルを付けてないんだよ。

――ちなみに、みなさんは自分達のアルバムをどう呼んでいるんですか?

クリス:普通にセカンド・アルバムって(笑)。

ジャイ:もう名前はファンに任せてて、ファンが呼ぶ通りに俺たちも呼んでるよ。

マティウ:俺は今作を『ピープル』って呼ぶかな。ジャケットは、よく見ると大勢の人が集まった写真なんだ。それをオレンジと黒を基調に編集にしている。『オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック』って感じ(笑)。

全員:ハハハ(笑)。


――今後決まるタイトルが楽しみですね。これまでは自主レーベルから作品を発表されていましたが、このアルバムは<Epic Records>からリリースされていますね。

マティウ:スタジアム公演が終わった後、たくさんのレーベルからオファーがあったんだ。実は過去にレーベルと契約したことがあったんだけど、結局インディーのほうがいいなって思って、自主レーベルから出していたんだけど、今回はいいタイミングだと思った。彼らと話をして、俺達のことを信じてくれていると感じたし、一般的ではない、どこか変わったクリエイティブな部分を自分たちで築きたいという、譲れないポイントを尊重してくれた。

マーロン:コラボの面とか自分達に主導権を持たせてくれることも嬉しかった。

――今回のプロモーション来日のように、今作からワールドワイドな活躍を行うためなのかとも思いました。

マティウ:もちろん、それも大きな理由の一つ。

マーロン:それを行うのに今が一番いいタイミングだと思ったんだ。

――スタジアムをソールドアウトできたという自信が、今がいいと思える理由のひとつでしょうか?

マティウ:俺達、理由もなく自信だけはあるんだよね(笑)。全ては起こるべくして起こるもの、と言うように、何事も理由があって起こるのだから、今はこの流れに身を任せているよ。

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――その『SIX60』からのリードトラックの「Please Don’t Go」は、ビートとファルセットが効いたすごくカッコいいトラックですね。この曲はどのようにできたのでしょうか?

マティウ:ロサンゼルスで曲作りをしていた日の終盤に、サビのメロディーを思いついたんだ。それをボイスメモに残しておいて、翌日すぐにスタジオで取り組んだ。

――ほかの皆さんはメロディーを聞いた時、どう思いましたか?

クリス:(冗談で)最悪だと思ったよ。

ジャイ:(笑)。プロセスが進んでいくごとに、進化していったんだ。レコーディングの序盤と中盤、終盤を経験して、同じ曲とは思えないほど曲の印象が変わっていったし、ここに辿り着くまでにたくさん苦労もした。最初に聞いたとき、これはファルセットが印象的な曲になると思ったし、今後この曲がリスナーの反応によってどう変化していくのか、その行方が楽しみだよ。

マティウ:この曲のアイデアが生まれた時、俺達の好きな音楽要素が全部詰められると思った。この曲を通してSIX60を説明できるような、それぞれの音楽のルーツを入れられると思って、ノスタルジックなサンプルや、例えばドクター・ドレーのヘヴィなドラム、耳に残るようなビッグなメロディーやコーラスなどを用いている。曲として成り立たせるのも大事だけど、バンドだからプレイでそれを表現することにも注力している。そういう意味でも細かな楽器使いを楽しめると思うよ。この曲をすごく誇りに思っているし、プレイするのもすごく楽しい曲。


――ジャンルにとらわれない音楽作りを目指しているという言葉や、先にアルバムから発表されていた3曲からも分かる通り、SIX60の音楽は一つのジャンルに括れない楽曲ばかりですよね。自分たちの音楽を説明する場合、どんな形容詞がしっくりくると思いますか?

マティウ:(日本語で)“カッコいい”音楽(笑)。

クリス:ん~、ソウル?

マティウ:色で言うなら全色っていう感じ。

――ジャンルレスかつ皆さんの音楽ルーツを詰め込んだ作品に仕上がっているとのことですが、例えば、今後カントリーチックな音楽ができる可能性もあるのでしょうか?

マーロン:もちろん、最終的にはそこを目指してる(笑)。(アメリカ人のスタッフを指さして)彼が大のカントリー好きだからね(笑)。

――(笑)。アメリカではラジオがまだまだ音楽市場の中でも発信力の強いマーケットですが、ラジオでかかるような音楽作りを心掛けていたりしますか?

マティウ:もちろん。たくさんの人に聞いてもらうために、あらゆる手段を講じてる。俺の個人的な考え方としては、音楽作りのときは、ピュアでクリエイティブな発想と、多くの人に聴かれるために、ラジオとかSpotifyとかメディアといったマーケティングのことを半々に考えている。それにライブをどうやって展開するかといったことを、アルバムを出すたびに考えているし、それは作品ごとに上達しているようにも思える。

――キャリアは10年を超えていますが、バンドとしてどう成長していると感じますか?

マーロン:全てにおいて成長してると思うんだ。10年前の俺たちができることの限界と、今の俺たちのそれは比べものにならなくて、それはクリエイティブな部分とかライブやレコーディング、バンドとしての活動、それと友達である俺たちの関係性のことが言える。結成当初の俺達とは全く別のバンドに成長してきている。

――なるほど。少しお話は変わりますが、先日、東京でミュージックビデオを撮影されたそうですね。あれはどの曲のビデオなんでしょうか?

マティウ:「Please Don’t Go」だよ。あれは屋上で撮った時に撮った写真で、ビデオは全編、日本で撮影したんだ。

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Tokyo shoots a wrap. New Video Coming Soon

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――ライブにMV撮影に、話題となったホテルでのピアノ演奏など、全国各地で色々と経験したんですね。これから日本では、この最新アルバムから皆さんの作品を知っていく人が増えていくと思いますが、日本のリスナーにどういうところを注目してほしいですか?

マティウ:あえて言いたいのはニュージーランドの伝統的なマオリ音楽をサンプリングして、それをモダン化した要素がアルバムに散りばめられているということ。このことによって音楽に原始的で素朴な印象を与えているから、そこを聞いてもらいたい。

ジャイ:レゲエが各曲に時々分かりやすく、そして分かりにくく入っているから、そこも注目してほしいね。

マーロン:ニュージーランドではレゲエが人気だし、レゲエはニュージーランド人にとって欠かせない音楽なんだ。



――それは知らなかったです。確かに「Raining」はレゲエサウンドですよね。「The Greatest」はザ・ビートルズとモハメド・アリからインスパイアされたようですが、この曲のバックストーリーを教えてもらえますか?

マティウ:アルバム全体に関わってくれたマレイと初めてロサンゼルスのララビー・スタジオで会った時に、そのロビーにビートルズとアリの写真が飾られていたんだ。スタジオに入って最初にこの写真を目にしたんだけど、そのインパクトが強くて、「この写真と同じくらいのインパクトを与えられるような曲を作ろう」って話になってこの曲が作ったんだよ。

――努力なくしては偉大な人物(グレイテスト)にはなれないという曲だと思ったのですが…。

マティウ:まさにその通り。俺たちはビートルズにもアリにも影響されているし、ニュージーランドのビートルズって呼ばれることもあるんだ。

――ビートルズには5人目のメンバーがいるって言われているので、人数もちょうど合いますね(笑)。

全員:ハハハ(笑)!


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