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ケイジ・ジ・エレファント 新作『ソーシャル・キューズ』発売記念特集



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 すっかりアメリカン・ロックを代表するバンドとなったケイジ・ジ・エレファント。一介のローカル・バンドだった彼らだが、エモーショナルなローファイ・サウンドと独自のミクスチャー感覚を武器に個性を表現し、ついには【グラミー賞】を獲得するまでに成長した。ここでは、2019年4月19日に新作『ソーシャル・キューズ』(輸入盤)を発表したばかりの彼らの魅力を紹介しよう。

強豪バンドを抑えてグラミー受賞

 2017年2月に発表された【第59回グラミー賞】。アデルの5冠達成やデヴィッド・ボウイの遺作の受賞などが話題になったこの年、<最優秀ロック・アルバム>に輝いたのが、ケイジ・ジ・エレファントの『テル・ミー・アイム・プリティ』だった。ウィーザー、ブリンク182、パニック!アット・ザ・ディスコ、ゴジラといったキャリアのあるバンド達を押しのけ、彼らが受賞に輝いたことに、ロックの新しい夜明けを感じた方も多かったのではないだろうか。2015年2月にリリースされた『テル・ミー・アイム・プリティ』は、彼らにとって4作目のスタジオ・アルバム(国内盤は2016年1月発売)。ザ・ブラック・キーズのダン・オーバックをプロデューサーに迎え、持ち前のローファイなガレージ・テイストに、ヴィンテージ感覚に満ちたアーシーなアメリカン・ロック的な味わいをミックスさせた独自のロックンロールを展開してみせた。ファースト・シングル「メス・アラウンド」はビルボードのロック・エアプレイやオルタネイティヴ・ソングスといったチャートでも1位を獲得し、世界初のSF映画といわれるジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』の映像を編集したミュージック・ビデオも話題となった。まさに、名実ともに米国を代表するバンドとしての地位を確立した金字塔といえるのが、前作『テル・ミー・アイム・プリティ』なのである。



▲Cage The Elephant - Mess Around

米ラジオ・チャートの常連バンド

 ケイジ・ジ・エレファントのプロモーションにおける特徴というと、ラジオでのエアプレイに強いということだろう。もともと彼らがデビューを飾ったのは、英国が最初だ。2008年のデビュー・アルバム『ケイジ・ジ・エレファント』は、ジョス・ストーンなどを抱えるレーベル「Relentless」からリリースされている。そして、UKでの活躍ぶりを背景にシングル・カットされた「エイント・ノー・レスト・フォー・ザ・ウィキッド」が、米国のラジオ・チャートで上位に食い込むことになり、当初の予定よりも1か月早く全米デビューが決まったという経緯がある。



▲Cage The Elephant - Ain't No Rest For The Wicked (Official Music Video)

 デビュー時からラジオ業界では熱心なシンパは多かったようだが、2013年発表のサード・アルバム『Melophobia』から先行でカットされたシングル「Come A Little Closer」はさらなるラジオでの大量露出が行われ、ついにビルボードのエアプレイ・チャートで1位を獲得。2013年の同チャート年間23位、そして2014年でも年間3位という成績を残した。同じく本作からカットされた「Cigarette Daydreams」もエアプレイ・チャートで2位となり、ラジオ・フレンドリーなバンドというイメージとなった。



▲Cage The Elephant - Come A Little Closer (Official Music Video)

 その後も、『テル・ミー・アイム・プリティ』からの「メス・アラウンド」、「トラブル」、「コールド・コールド・コールド」と、シングル・カットされた楽曲は軒並みエアプレイ・チャートの首位を含む上位に食い込んでいる。まさにラジオとの相乗効果によって、彼らの躍進があったといえるのではないだろうか。



▲Cage The Elephant - Trouble (Official Music Video)


▲Cage The Elephant - Cold Cold Cold (Official Music Video)

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ガレージロック・サウンドが十二分に炸裂する最新アルバム

 この度リリースとなったアルバム『ソーシャル・キューズ』は、前作『テル・ミー・アイム・プリティ』よりおよそ3年半ぶり、5作目のスタジオ・アルバムとなる。前作がグラミー受賞作ということもあり、その後の展開に期待されていたが、結論からいうとその期待を大きく上回る力作に仕上がっている。2018年の11月に彼らのツイッターでアルバムの完成がアナウンスされ、年が明けて2019年1月に新曲「Ready To Let Go」が発表された時点で、傑作の予感はあったのではないだろうか。この曲は前作のアーシーなテイストを踏襲しつつも、デビュー当時を想起させるざらっとしたローファイな質感のバンド・サウンドが特徴だ。続いて発表された「House Of Glass」は、さらにガレージ感の強いクールなロックンロール・ナンバーだったが、極めつけは「Night Running」だろう。ベックをゲストに迎えて制作されたこの曲は、お互いのレイジーな感覚がマッチしたハード・ブルースとでもいうべき見事なコラボレーションとなっている。



▲Cage The Elephant - Ready To Let Go (Official Video)


▲Cage The Elephant, Beck - Night Running (Audio)

 アルバムのプロデュースは、前作のダン・オーバックから一転、ジョン・ヒルが手がけている。ジョンはシャキーラ、M.I.A.、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、イマジン・ドラゴンズなどロックからヒップホップまで多様なジャンルで活躍しているミュージシャン兼プロデューサーだ。だからこそ、バンドがもともと持っていた衝動性と、米国南部ならではのレイドバックした感覚をうまくかけ合わせながら、今の時代に合った新しい感覚を取り入れることに成功した。その顕著な例が、冒頭を飾る「Broken Boy」だ。不穏なシンセの響きから一気にロックンロールのビートが疾走するエキサイティングなナンバーは、ラフなようでありながら音色や音響にこだわり、きめ細かく練り上げられている。この曲を筆頭に、比較的ハードでワイルドな印象のナンバーが並んでいるのだが、決して勢いに任せるのではなく、音楽的な実験精神や遊び心が効いているのも、彼らの成長の証といえるだろう。

 メロディアスなタイトル曲「Social Cues」、訥々と語るように歌う「Skin and Bones」、ファンク風のグルーヴがどこか不穏な「The War Is Over」、タイトルに思わず反応してしまう「Tokyo Smoke」など、いずれもシングル・カットしておかしくないクオリティを誇る。そしてなによりも、アルバム全体を覆うドラッギーでけだるいムードに魅了されるだろう。ついにここまで到達したのかということと、新たな一歩を踏み出したという印象も感じさせる。オーケストレーションを配した儚くも寂しいラストの「Goodbye」で幕を閉じるが、もしかしたらこの曲はこれまでのケイジ・ジ・エレファントと決別し、これから新しい道へ進むことを、静かに表明しているのかもしれない。



▲Cage The Elephant - Goodbye (Audio)

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