Billboard JAPAN


Special

DJ MINOYAMAインタビュー ~「1979年」をテーマにしたプレイリストも公開~



 横浜の老舗クラブBridgeのレギュラーイベント「CleanUp」を初め数々のパーティーのオーガナイズしクラブDJとして一線で活躍を続け、いかなる場面でも決してフロアのクラウドを裏切ることの無い的確かつ華麗なDJプレイが多くの人々からの絶大な信頼と支持を得ているDJ MINOYAMAにインタビューを敢行。そのキャリアから現在のクラブシーン、そして昨年よりBillboard cafe & diningでスタートした水曜日のDJナイト【wednesday HOT】について語ってもらった。3月20日の【wednesday HOT】テーマにもなっている「1979年」のプレイリストも公開。

その箱やオーディエンスの雰囲気を感じ取りながら選曲と流れを考える

―まず、DJを始めたきっかけを教えてください。


MINOYAMA:高校の頃、日本語ラップのブームで、自然とまわりにヒップホップのアパレルやラジオだったり、B-BOYパークやさんピンCAMPがあって、ヒップホップに触れる機会が自然と増えていって、当時ヒップホップを聴いていた周りの人たちはCDよりもアナログレコードを買っている人が多くて、その流れで僕もレコードを集め始めて、DJを目指すようになりました。

―そこからDJとしてのキャリアはどのように積んだのですか?


MINOYAMA:一番最初は高校時代からの遊びの延長で、ヒップホップ好きの仲間と一緒に幡ヶ谷とかでパーティーをやっていたんですけど、そこから横浜のLOGOSやCIRCUSといった地元のクラブに遊びにいくようになって、クラブDJの影響を受け、LOGOSで下積みをしました。

―なぜLOGOSで?


MINOYAMA:僕の仲良い先輩がケツメイシのDJ KOHNOさんの友達で、一緒に飲む機会があって、僕が「DJやりたいんです」って言ったら、KOHNOさんに「じゃあ来週から回しに来なよ。火曜日帯でやってるから」と誘ってもらって…僕のDJを聴いたことないのに(笑)。そこからLOGOSでやるようになりましたね。

―当時からヒップホップをメインにかけていたんですか?


MINOYAMA:半分くらいはR&Bでしたね。メアリー・J. ブライジやSWVのようなR&Bがすごくノっていた時代で、僕がやっていた火曜日の帯のイベントはゴリゴリのヒップホップというよりは、そういうR&Bで雰囲気を作っていました。

―ご自身が主催するイベントもそのあたりから始めたんですか?


MINOYAMA:そうですね。19才の時に横浜のCRIBという箱で「CLEAN UP」というイベントを立ち上げました。途中Bridge Yokohamaに場所を変えたりしましたが、それ以来21年間、いまも月に一回(第4土曜日)やっています。

―レコードを買う基準はあったりしたのですか?


MINOYAMA:やっぱりアナログレコードも安くはなかったので、イントロがついているかどうか、音圧も含めて、現場で使えるかどうかは一つの基準でしたね。イントロを聴いて、サビを聴いて…1曲に対して10秒もかからず買うかどうか決める時もあります。

―いきつけのレコードショップは?


MINOYAMA:高校生の時は町田の「FREAKS」によく行ってましたね。試聴させてもらうだけでも精一杯っていうくらい店員さんがめちゃくちゃ怖かったんですけど(笑)。いまは下北、渋谷、新宿、横浜、関内、その辺りのレコ屋にはよく行きます。ヨーロッパで怪しげな7インチばっか再発している様なサイトからも買ったりします。

―現場でDJをする時に心がけていることはなんですか?


MINOYAMA:もちろん場所や状況によって考えなきゃいけないことは変わりますけど、まずは僕の前にDJがプレイしているなら、そのDJがどんな曲をかけて、流れを作っているかは聴いています。あとはフロアの状況、踊っている人だけじゃなく全体の雰囲気もよく見るようにしてます。ずっと踊っている状況であればどこかで休ませるようなスムース展開になるようにしてみたり、逆に座っている人を踊らせるようなテンションを上げる流れを組んでみたり…。


―そういったスキルは、現場でキャリアを積んでいくうちに経験で身についていった?


MINOYAMA:自分でも考えてましたし、先輩からは「冷静に判断する」ように教わってきましたね。プレイする時間帯によっても選曲は変わりますし、ピークタイムではかけれないけどオープンのタイミングでハマる曲もありますし、ラストに似合う曲もありますよね。その箱やオーディエンスの雰囲気を感じ取りながら選曲と流れを考えてます。たとえば、横浜はムードを大事にするところがあるので、「アーリーはゆっくり、クローズはムーディーに湿っぽく」といった流れは僕が通ってきた横浜ならではの伝統的な部分かもしれまないですね。横浜はお客さんもお店のスタッフも地元の人が多いので、連携が取りやすい部分はありますね。

―特に刺激を受けるクラブやイベントはありますか?


MINOYAMA:うーん…例えばニューヨークには年一回くらい色々な刺激とエネルギーをもらいに行ってます。DJもオーディエンスも日本とは違う雰囲気だし、そこで聴いた曲や見て感じた流れを日本に帰ってきて自分のプレイに落とし込んでみたりしますね。

―いま現場でよくかけている曲や注目しているアーティストは?


MINOYAMA:アメリカのシーンももちろんチェックしてますけど、いまはトム・ミッシュやMura Masa(ムラマサ)、FKJとか、ヨーロッパのダンスミュージックも好きです。



▲Tom Misch - It Runs Through Me (feat. De La Soul) [Official Video]


NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 話を受けたときは正直「これで‪3時‬間できるかな?」って思いました(笑)。
  3. Next >


話を受けたときは正直「これで‪3時‬間できるかな?」って思いました(笑)。

―キャリア21年の間に日本のクラブシーンは変わりましたか?


MINOYAMA:まずは環境が変わりましたね。昔はDJブースに立つのがすごく大変で、そこに立つまでが一つの勝負だったし、そこに至るまでのルートも多くはなかった。いまはDJも増えたので、ハードルはグッと下がった気はしますね。音楽自体も細分化されて”ヒップホップ”と言ってもひとつじゃないし、オーディエンスも細分化されて、同じクラブでもパーティーによって客層から何からガラッと色が変わりますね。いわゆるお店に付いている常連が少なくなって、パーティーやDJに付いていく傾向が増えた気がします。

―20代のような若者が夜遊びしなくなったという話も聞きますが、実際の現場ではどうですか?


MINOYAMA:たしかにいま30代が多い印象ですし、40代、50代の先輩もまだまだ元気なので、その分「20代はどこ行った?」と思うこともありますね。ただ、日本のヒップホップシーンに関していうと、若い子中心に盛り上がってるなという感じはありますね。レギュラーでやっている「CLEAN UP」にフリースタイルダンジョンで活躍しているFORK(ICE BAHN)が出演しているんですけど、それを目当てに来てくれる若い子も沢山います。番組の影響はすごく大きいですけど、そこからイベントに足を運んでくれる人が増えたのは単純にうれしいですね。ライブ目当てに来た人も必ずその前後のDJは耳にするので、そこでDJかっこいいって思ってくれたら最高だし、そう思わせられるようにDJも頑張らなきゃって思ってます。

―最近ではクラブ以外でも、DJが入っているレストランやバー、ホテルのラウンジも増えたように思うのですが、いかがですか?


MINOYAMA:そうですね。昔は考えられなかったですけど、いまはクラブ以外の現場も増えてきましたね…悪い意味ではなく。いまは、クラブは行かないけどカフェやバーだったら行きたいっていう人も多いと思うし、そういう人たちが純粋に音楽を楽しんでもらえれば良いと思いますね。僕自身もクラブとは違う雰囲気やお客さんに合わせて色んな選曲を考えるので、そういう現場もすごく楽しんでやってます。

―ビルボードカフェ&ダイニングでは特定の年代のビルボードチャートがテーマで、しかも‪3時‬間のDJですが実際にやってみていかがですか?


MINOYAMA:勝手に「Throw Back Night」って呼んでるんですけど(笑)、毎回すごく勉強になりますね。ビルボードチャートはロックもポップスもファンクもR&Bもあって、本当にジャンルレスなチャートなので、準備には結構時間をかけてますね。初めてやったときのテーマは「1988年」だったんですけど、話を受けたときは正直「これで‪3時‬間できるかな?」って思いました(笑)。それでも一回やってみると手順も掴めてくるので、頭の中では‪3時間のイメージはできるようになりましたね。

―選曲の流れは決めてくるんですか?


MINOYAMA:決めてはいないですけど一つ意識しているのが、その年を代表する誰でも知っているような曲でオープニングを飾るようにしていますね。そこは出し惜しみなしで。オープニングだけ決めて、あとはその時の雰囲気で選曲していきます。全部をかけられるわけではないですけど、チャート上位に入っている王道のヒット曲は抑えつつ、家にあるその年にリリースされたレコードを引っ張り出して埋もれていた名曲をかける”クラブDJならではの脱線”も取り入れています。曲の繋ぎひとつでめちゃくちゃ良い曲に聴こえるものもあると思うので、そういう発見も楽しんでもらえるといいですね。

―その年のヒット曲から隠れた名曲を知れるセットなんですね。


MINOYAMA:その年に青春時代を過ごしていた人たちは、当時を思い出させてくれる曲が聴ける良い場だと思います。あと、自分が生まれた年がテーマだったら、その年に生まれた音楽には自然と興味が湧くと思うんですよ。実際にまわりからも「聴きたいです!」って連絡くれる人もいますしね。‪3時‬間のDJから好きな曲を見つけてもらえたらいいなと思ってます。

―最後に、今後の活動予定は?


MINOYAMA:年もクラブやラウンジだったり現場中心にやってくことになるので、まずはそこを一つずつしっかりやっていきたいと思っていますし、ライフワーク的にアイデアが浮かぶ限りはまたミックスCDも作っていきたいですね。あとはニューヨーク、また行きたいですね!


Billboard JAPANのApple Musicプレイリストはこちらから>>>

関連キーワード

TAG