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grram 『心の指すほうへ』インタビュー

grram 『心の指すほうへ』 インタビュー

 関西の新レーベル D-GO第1弾アーティスト grram(グラム)のボーカル 久川実津紀(くがわ みずき)へ初インタビュー敢行! 音楽なしでは見出せなかった未来、存在の証明、Chicago Poodleやdoa、GARNET CROW等のメンバーが楽曲提供した1stミニアルバム『心の指すほうへ』について語ってもらった。

苦しい学生時代、マイケル・ジャクソンに救われた

--デビュー前から「名探偵コナン」EDテーマに抜擢。自分の歌声が超メジャーなアニメから流れてくるのはどんな気分ですか?

久川実津紀:元々「名探偵コナン」の大ファンで、昔から観ていたので、決まった瞬間はもう嬉しくて嬉しくて。夢のような話だったんですけど、実際にオンタイムでテレビから流れてくる『悲しいほど 今日の夕陽 きれいだね』を聴いたときは“嬉しい”を飛び越えて“不思議”でした。なんで私の声が聞こえるんだろうって。

--そんな久川実津紀さん、自分ではどんなキャラクターだと思う?

久川実津紀:アルバム『心の指すほうへ』の中には、いろんな自分の写真が載っているんですけど、本当にこういう感じで多面的。ひとことで「こういう人」とは言い切れないところがあります。好奇心旺盛で、意外と強がり。意外と……あ、これからデビューするのに「意外と」っておかしいですよね(笑)。えーっと、人見知りなところもあります。結構、自分に自信がなかったりするんですよ。でもその反動で“私がここにいる”って知ってもらいたいと思うんです。それは音楽を始めたきっかけでもあって。

--興味深い話ですね。

久川実津紀:人に悩みを打ち明けたりとか、相談したりとか、自分からはなかなかできなくて。その反動で、自分の思っていることを歌詞にして伝えたいと思う。意外と……また言っちゃった。

--気にしないで下さい(笑)。

久川実津紀:暗いところと明るいところがすごく混在してます。

--それって昔からですか?

久川実津紀:小さい頃から性格は何も変わってないです。とりあえず好奇心旺盛で「あれ、何?」「これ、何?」「なんでなんで?」みたいな感じで。幼稚園の中でも何かを観察することが好きだったり。みんなの輪の中に自分から「混ぜて~!」って入っていけるタイプではなくて、その輪のちょっと近くで遊んだりして。それで「みずきちゃん、おいでよ」って言ってもらえるのを待っていたり。

--かなり遠回りしますね(笑)。

久川実津紀:そうなんですよ! 音楽を始めたのも“私がここにいる”ってことを知ってもらう為なので。そこは小さい頃から変わらないんです。自分からは言えない、入っていけない。でもアピールはする。

--じゃあ、友達を作るのも大変ですね。

久川実津紀:それが友達は多いんですよ。私の周りの子がみんな社交的だから、引っ込み思案の私に話しかけてくれるんです。

--音楽以外にはどんなことにハマったりしていました?

久川実津紀:映画鑑賞です。ディズニーやジブリから始まって「オペラ座の怪人」を観てから一気にハマりました。あの映画でエンターテインメントの世界の素晴らしさ、日常生活では体験できない世界に触れられる面白さを知ったんですよね。本も好きなんですけど、現実では絶対に行けない世界へ行けるのが好きなんです。

--好きだった有名人は?

久川実津紀:マイケル・ジャクソンです。モータウン25周年イベントにおける『ビリー・ジーン』のパフォーマンスを観たとき、物凄く心に突き刺さるものがあって。で、人に何かを伝えることの素晴らしさを知って、「私もそうなりたい」と思ったんですよね。

--そんな久川さんが音楽の道へ進もうと思ったストーリーを教えて下さい。

久川実津紀:中高生のとき、自分の存在価値が分からなくなっていたんです。「私がここにいる意味はなんだろう?」とか「私がいなくても別にいいじゃないか」とか思ってしまう時期があって、すごく辛かったんですね。そこで“私がここにいる”と知ってもらいたい想いが生まれて。あと、マイケル・ジャクソンのライブ映像を観て、すごく救われたんです。で、自分も歌うことで、何かを伝えることで、誰かを前向きにするような人になりたいと思って。

--話せる範囲でいいんですが、存在価値について悩んでしまった要因は?

久川実津紀:結構たくさんあるんですけど、やっぱり学校での女の子同士の付き合いとか。特殊じゃないですか。そこで周りが楽しそうにしていたら、私も一緒に笑って。例えば、誰かの悪口を言われたら、自分はそんなことを思っていなくても、外されたくないから「分かる」って言ったり。常に周りに合わせて自分を作ってしまっていたところがあって。そういうところで悩んで「じゃあ、私なんて居なくてもいいじゃないか」と思ったり。それは今回のアルバムの『オレンジの空』という曲に表われているんですけど。

--どうしてそれを歌にしようと思ったんですか?

久川実津紀:最初にこのデモ曲を聴いたときに、そのときの景色、そのときの感情がすべて完全にフラッシュバックしてきて。だから歌詞を書くのにもそんなに時間がかからなかったんです。あのときの気持ちをありのままに書いたので。これは当時だったら重苦しくて歌えなかった。今だから歌えるし、誰かにこのメッセージを伝えようと思える。

--当時の久川さんみたいな状況に立たされている学生や若者って、今も多いと思いますか?

久川実津紀:思います。もしかしたら今の方が凄いかもしれない。ネットを更に頻繁に使うようになってきているから。学校では仲良くしているけど、ツイッターでは悪口を書いていたり。

--今の時代ならではの残酷さですよね。何でも見えちゃうという。

久川実津紀:だから常に不安だと思います。私のとき以上に辛い想いをしているかもしれない。ずーっと不安を抱えている娘とかはいるはずです。私はそういうぶつけようのない想いをずっと歌詞に書き溜めていたんですよ。中学2年生から、友達とか家族にも打ち明けられない、消化し切れない気持ちを書いていた。で、音楽に救ってもらえたので。

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--歌うことの面白さに目覚めたのはいつ?

久川実津紀:2才です(笑)。その頃から歌っているときが幸せで。自分の心のままに歌うのが大好きで、親から怒鳴られるぐらいずっと歌っていました。

--久川さんのルーツは分かりました。続いて、デビューまでのストーリーを教えてください。

久川実津紀:多くの人たちの前で歌えるようになる為に何をすればいいのか、全然分からなくて。だから歌詞を書き留めているだけ。趣味程度には曲も作ってみたりしたんですけど。それが中学時代ですね。で、高校生になってから音楽スクールの存在を知って、すぐ入ったんです。そこでオーディションとかを受けているうちに、プロデューサーに紹介して頂いたりして、今に至る。

--音楽以外に進みたい道はなかったんですか?

久川実津紀:そうですね。「将来、自分がどうなっているか分からない」みたいな不安はあったと思うんですけど、音楽以外は考えてなかったです。私は自分の持っている意見だったり、メッセージだったり、とにかく“自分”を伝えたかったので、それをするなら音楽しかないと思って。

--それはデビューが決まらなくてもやっていたと思いますか?

久川実津紀:はい。

--「自分に音楽は無理かな」とか「夢なんて追っ掛けてないで、もっと遊んじゃおう」って思うことはなかったの?

久川実津紀:なかったです。私はずっと「何かを残したい」と思っていたんですね。自分の存在意義に悩んでいた時期も、その想いは強くあったんですよ。それは「遊びたい」という気持ちよりいつも勝っていたので。仮にそれで孤独になっても、すべては歌詞に繋がると思っているんです。どんな感情も受け入れられるから。

--grramのメンバーとしてデビューすることになった経緯を教えて下さい。

久川実津紀:2010年の秋、ミュージックスクールの定期オーディションで グランプリをとったんですが、その頃にプロデューサーから女性ボーカルを探してるということで、丸山太佑さん(g)、猪上涼太さん(b)、西山圭さん(dr)を紹介して頂いたんですね。それでスタジオで一度音合わせしてみたら、すごく息が合って。そのバンドの空気が心地良くて、私はもうこのメンバーで歌いたいと思いましたし、3人も一緒にやっていこうと思ってくれたので、この4人でデビューすることになったんです。

--そんなgrramのデビューアルバム『心の指すほうへ』を聴かせて頂いたのですが、まず恋愛の歌が悲しい。特に『あなたがいない』の悲しみの深さは尋常じゃないです。今、これだけ悲しいJ-POPはなかなか聴けませんよ。

久川実津紀:これはデモ曲をもらったときに「前向きではないな」と思って。失恋してすぐに「前を向いていこう」なんて言えないから、これは最後まで落ちたままにしようと。それで、私は感情そのままで歌うので、レコーディングはすごく辛かったですね。

--これは実体験の恋愛が関与しているんでしょうか?

久川実津紀:実体験を織り込んでます。なので、自分の中でも暗い曲だなとは思っていて。最初は「こんなに暗くなっちゃって、いいのかな」「聴いてもらえる方に受け入れてもらえるかな」って思ったんですけど、失恋で落ち込んだときって前向きなことを歌われても綺麗事に聞こえるんですよね。だから最後まで前は向かないんですけど、本当に失恋している方には素直に寄り添える曲だと思います。

--今作は恋愛の曲に限らず、自分と対峙している歌が多いですよね。シチュエーションより心情を歌う。で、最終的にポジティブな方向へ転換している曲もありますけど、ネガティブのままだったり、迷ったままで終わる曲もあります。

久川実津紀:そこは大事にしています。私が嬉しいと思ったこと、辛いと思ったことって、もしかしたら誰の心の中にもあることかもしれないから。なので、知らないこと、感じていないことは書かないようにしています。それだと、伝わらないんじゃないかなって不安になるので。

--今作の表題曲『心の指すほうへ』にはどんな想いを?

久川実津紀:この曲はすごく強い応援ソングなんですけれども、おそらく年齢層とか関係なく誰もが共感し得る曲になっていると思います。何があっても自分の心の向かう方へ。後悔しないように進んで行った方がいいよっていうメッセージをストレートに表現できたと思うので。

--その『心の指すほうへ』を使用した“夢”CLIP企画も面白いですよね。10都市1000人分の“夢”を繋ぎ合わせる動画が続々とアップされていきました。ご覧になって、どんなことを感じました?

久川実津紀:ひとりひとり持っている夢は違うんですけど、共通して目がキラキラしていて。だから観ているだけで元気になれる。どうしても上の世代から私たちの世代は「ゆとり世代だから目標持っていない」とか「ダラダラしている」ってよく言われるんですけど、そういうことを仰る年代の方にも観てもらいたい(笑)。若い人だって口には出さないだけで、自分の中に何か志があると思うんですよ。それが“夢”CLIPにはすごく出ているので。

--久川さんはデビューというひとつの夢を叶えた訳ですが、この先にも叶えたい夢はあるの?

久川実津紀:もちろんあります。今はスタート地点にやっと立った状態なんですけれども、これから多くの人へちゃんとメッセージを伝えられるようになりたい。それで「grramがいたからこそ、その夢をちゃんと追いかけようと思えた」とか「立ち直れた」とか、その人の人生においてのポイントになれるような曲を届けられるバンドになれたらいいなって、すごく思っています。

--では、最後になるんですが、まだ見ぬリスナーや読者に向けてメッセージをお願いします。

久川実津紀:1stミニアルバム『心の指すほうへ』は、聴き終わった後に前向きな作品になっていると思います。ぜひ歌詞を追いながら聴いてみてください。

grram「心の指すほうへ」

心の指すほうへ

2012/03/21 RELEASE
GZCD-5001 ¥ 1,885(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.心の指すほうへ
  2. 02.悲しいほど 今日の夕陽 きれいだね
  3. 03.オレンジの空
  4. 04.君じゃない!私じゃない!
  5. 05.あなたがいない
  6. 06.新しい朝は来る

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