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2020/12/28

<ライブレポート>栗田博文/東京フィルハーモニー交響楽団/宮本貴奈/城田優ら、『PEANUTS』生誕70周年記念コンサートを開催 ジャズとオーケストラの多彩なアレンジで魅了

 「スヌーピー」で有名なコミック『ピーナッツ』がアメリカの新聞に登場してから、2020年で70年が経つ。アニーバーサリーイヤーである2020年は、世界の様々なコラボレーションが生まれ、海外の一流ファッションブランドから、毎日食卓の上にある醤油までスヌーピーとコラボレートして70周年を盛り上げてきた。『ピーナッツ』は愛らしいイラストだけでなく、その奥深い物語も世代を超えて人気だ。なかでもクリスマスの時期に放送された『チャーリー・ブラウンのクリスマス』は、チャーリー・ブラウンとその仲間たちが、商業主義に走らない本当のクリスマスの意味を探し求めるストーリーになっており、アニメで流れるヴィンス・ガラルディのジャズサウンドも傷心のほろ苦さを加え、大人になっても魅力が増す作品となっている。

 この『チャーリー・ブラウンのクリスマス』をテーマに、2020年を締めくくるにふさわしいコンサートがクリスマスイブに行われた。舞台となる東京文化会館は、感染症対策が徹底して行われ、座席配置も半数にしての開催ながらも多くの期待感と華やかな空気に包まれていた。開場前のエントランスでは、他言語も行き交い、スヌーピー柄のマスクをつけた女性たちがロビーを闊歩する。舞台の上部には大きなスクリーンが用意され、この作品のレトロなアニメ映像が音楽とリンクして楽しめる演出になっていた。ステージは、世界的指揮者の栗田博文と、東京フィルハーモニー交響楽団のフルオーケストラに、ジャズトリオが加わる編成だ。音楽監修とピアノは、ビッグバンドやオーケストラアレンジの分野で優れた才能とキャリアを発揮するジャズ・ピアニストの宮本貴奈。NYのブロードウェイショーの経験もあるベースのパット・グリンと、ハービー・ハンコック・バンドでも活躍したドラマー、ジーン・ジャクソンが脇を固める。そして『チャーリー・ブラウンのクリスマス』の大事な要素である子供のコーラスを再現する横浜少年少女合唱団が加わり、さらに俳優/歌手の城田優がゲストボーカルとして参加するという、総勢80人のこれ以上にない顔ぶれとなった。

 幕が開け、宮本と栗田が肘タッチをした後に、ゆっくりと照明が冬の景色へと変わり静かな鈴の音が近づいてくる。合唱団のコーラスから始まるオーケストラ「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」で静寂な聖夜の空気が会場をまとった。宮本の清々しいMCを挟みながら、クリスマスキャロルの「ホワット・チャイルド・イズ・ジス(グリーンスリーヴス)」、「もみの木」も含めたサントラの代表曲が多彩なアレンジで次々と繰り出される。オーケストラとクワイアで綴られた厳かな聖夜の世界、チャーリー・ブラウンとスヌーピーのおどけたやり取りをドラムソロも加えて表現したスウィンギーなジャズ、そして前半部のラスト「ライナス&ルーシー」ではヴィンス・ガラルディのラテンルーツの音楽性を引き継ぎ、木管楽器のオーガニックな重奏を取り入れながら複数のリズムチャンジを取り入れた演奏が繰り広げられ、オーケストラとジャズの新たな地平を見ることができた。

 続いて、ピーナッツのキャラクターの一人で、ベートーヴェンを敬愛するシュローダーにまつわる曲~ピアノソロによる「エリーゼのために」と、フルオーケストラで綴られたチャイコフスキーの「花のワルツ」の優美なクラシック・ナンバーを挟み、黒のスーツに赤いネクタイ姿の城田優が登場した。潤いある歌声とエモーショナルな歌唱力で、ナット・キング・コールのクリスマスソングから、マライア・キャリー、山下達郎、ワムのリズミカルなヒットメドレーも披露して、観客の手拍子を誘いながらパフォーマンスを繰り広げていく。そして、宮本のピアノとのデュエットでしっとりと歌い上げたルイ・アームストロングの「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」は、宮本の深みあるシックな歌声と、城田の豊かな声域のコントラストが互いの魅力を引き立てあい、重なり合って愛のメッセージを私たちに語りかけていく。この時間は、会場の誰しもが自分の心と向き合う特別の空間になっていた。

 演奏の間には、おしゃれに着飾ったスヌーピーが登場したり、栗田と城田の誕生日を祝うサプライズ、さらに城田のMC中で、彼の初デートの甘酸っぱいクリスマスエピソードのトークで笑いを誘う場面など、終始和やかな雰囲気でテンポよくプログラムが進行していく。

 小さなクリスマスツリーのシンプルさと魅力を歌詞にした「ジャスト・ライク・ミー」、フルートがソロをとる軽快なメロディにオーケストラの壮大なアレンジを加えたデイヴ・ブルーベックの「ベンジャミン」を経て、「クリスマス・イズ・カミング」の再演でとうとうクライマックスへ。コンサートの前半部ではジャズをベースにオーケストラならではのアンサンブルを展開していたのに対し、ここではオーケストラ編成でジャズの手法を取り入れたアレンジを見せる。各楽器のソロが即興的にアグレッシブに会話をしながら、エンディングへと向かう様は大変爽快で、その後に続く全メンバーでのラストナンバー「ウィ・ウィッシュ・ユー・ア・メリー・クリスマス」まで熱気に包まれながら、声無き大喝采の中コンサートは幕を閉じた。一夜を通して体験した多彩な編曲の数々に、ジャズとオーケストラの可能性を感じたファンも多かっただろう。終演後には、今回のテーマとなったサントラ盤やパンフレットを求めて長蛇の列が並んでいた。このコンサートによって『ピーナッツ』のストーリーやヴィンス・ガラルディによる音楽に意味が生まれ、その魅力をもっと探ろうと多くの大人の心に火がついたに違いない。充実感に満ち溢れた、東京文化会館の聖夜だった。

Text by 大塚広子


◎公演情報
【billboard classics PEANUTS 70th Anniversary SNOOPY Premium Symphonic Christmas Concert】
2020年12月24日(木)OPEN 17:30/START 18:30
東京・東京文化会館 大ホール

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