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2020/10/11

ロングヒットはきっかけ作りが最重要?! 藤井風のデビュー作

 毎年たくさんの新人アーティストがブレイクしていくが、藤井風は2020年で最も期待されているひとりではないだろうか。12歳からYouTubeでカヴァー動画を発表しており、少しずつ人気を得ていたシンガーソングライターだが、昨年末のメジャー・デビューによって一気にブレイク。5月に発表されたファースト・アルバム『HELP EVER HURT NEVER』は、ビルボード・ジャパンHot Albumsで初登場首位を獲得した。

 そして、リリースから早くも半年近く経とうとしているが。このアルバムは未だにチャートの上位を推移している。今週のHot Albumsでは、20週目のチャートインにして18位という好成績(【表1】)。デビュー作にして安定したロングヒットとなっており、しばらくは大幅にダウンすることもなく、話題を作り続けることによってまだまだヒットは続くだろう。

 とはいえ、ロングヒットとなるにはきっかけが必要だ。歌番組への出演からTikTokでのバズなど要因は様々だが、藤井風の場合は本人出演ではないがテレビでしっかりと紹介されたことが大きかったといえる。8月16日に放送されたテレビ朝日系の音楽番組『関ジャム完全燃SHOW』で、ヒャダインが“ここ数十年の中で一番の天才だ”というような表現で紹介し、ツイッターでもトレンドに入った。これによって、Hot Albumsでのポイントも大きく反応している。

 それまでは、リリース後ゆるやかに右下がりで下降しており、番組オンエア直前の集計である8/17付では41位だったのが、番組放送後の8/24付では22位、そしてさらに次の週の8/31付では6位にまで再浮上した。チャート要素の中で最も反応しているのが即効性の高いダウンロードであり、まさに配信時代のアーティストであることに納得ができる。また、ルックアップ(PCによるCD読取数)も併せて上昇しているため、レンタルを利用するグレーユーザーにもしっかりと届いていることがわかる。その後は、9月にテレビ朝日系の報道番組『報道ステーション』で特集された他、日本武道館公演が今月末に行われるなど、話題性は事欠かない。これらの要素が口コミとも相まってスパイラルとなり、ずっとヒットし続けているのだろう。

 ロングヒットとなるには、もちろん作品の良さは最低限の条件ではあるが、タイミングよくメディアで露出するなどの話題を作り、そこにユーザーの動きをうまくリンクさせることが重要だ。そのひとつの成功例が、藤井風のブレイクといえるのではないだろうか。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。

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