Billboard JAPAN


NEWS

2015/04/23

Album Review: ルーカス・サンターナ 色彩豊かなブラジリアン・サウンドとその魅力が詰まった秀作

 魑魅魍魎とした音楽の密林。ブラジルの音楽シーンを表現するなら、そんな言葉が似合うのではないだろうか。ボサノヴァやMPBといった洗練されたサウンドが日本では取り上げられる機会も多いが、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロを離れて北に向かうと、ディープなフォークロアな世界が横たわり、それらを日々アップデートしていくミュージシャンが蠢いている。

 2000年にソロ・デビューを果たしたバイーア州サルヴァドール出身の鬼才ルーカス・サンターナも、そんな革新的なミュージシャンのひとりといえるだろう。ブラジル屈指の変人であるトン・ゼーと親戚関係にあるということからも、なんとなく想像が付くかもしれない。いずれにせよ、フランスのレーベル、No Formatと新たに契約を交わして制作された通算6作目のオリジナル・アルバム『夜と昼に』は、昨今ユニークな作品を続々と生み出しているブラジルの中でも、かなりレベルの高い作品であることは確かだろう。

 そこには、しっかりとヴォーカルを押し出しながらも、ロックやエレクトロな味付けを施したブラジリアン・サウンドがたっぷり詰まっている。サンバやボサノヴァの要素もあるが、「Mariazinha Morena Clara」などにはノルデスチといわれるブラジル北東部の薫りもたっぷりと含まれているのが特徴。また、ラッパーをフィーチャーしたアッパーなナンバーもあれば、女優のファニー・アルダンがアンニュイに語る声まで聞こえてくる。とにかくめくるめくカラフルなブラジリアン・サウンドが詰まっており、濃厚な味わいに圧倒されるだろう。誰にも代えられない独自の姿勢は孤高の存在ともいえるが、それだけに混血文化の極北であるブラジル音楽の魅力が、よりいっそう伝わる秀作なのだ。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『夜と昼に』
ルーカス・サンターナ
2015/04/05 RELEASE
3,024円(tax incl.)

ルーカス・サンターナ その他の画像・最新情報へ

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <ライブレポート>King Gnu、現代ロックバンドの“王”たる所以を体現した5大ドームツアー【THE GREATEST UNKNOWN】東京公演

  2. 2

    <完全版ライブレポート>Superflyが感謝と癒しを届けた【Heat Wave】ツアーファイナル

  3. 3

    【ビルボード】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」2週連続9か国首位キープ 藤井 風「満ちていく」タイ&シンガポールで初登場

  4. 4

    <ライブレポート>ジャネット・ジャクソン、圧巻の歌とダンスで余すことなくキャリアを綴った5年振り来日公演【TOGETHER AGAIN】

  5. 5

    <ライブレポート>チ・チャンウク “俳優”ではなく、“歌手”として。初のジャパンツアー開催

HOT IMAGES

注目の画像