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2013/02/25

剥き出しで戦える女子高生 代弁でも応援でもなく「ただ隣に」

 ビーイングによる全国オーディションでグランプリ受賞。4月17日にメジャーデビューシングル『ゆれるユレル』をリリースする現役女子高生シンガーソングライター 新山詩織が、2月某日 都内のライブハウスにその姿を現した。

<新山詩織のリアル、目撃。剥き出しで戦える音楽。>

 何の事前告知もなくステージに登場した彼女は、現在ネットで話題となっているノンフィクションドキュメンタリーフィルム(http://bit.ly/11hKuSc)の印象通り、いつ泣き出してもおかしくなさそうなか弱い女の子。でも何かを伝えたくて仕方ないムードは全身から溢れており、熱量高いバンドサウンドが鳴り響いた瞬間、不器用ながらにもガムシャラにギターを掻き鳴らし、その風貌からは想像のつかないスモーキーボイスを放ち、観客の度肝を抜く。

 繊細ゆえに鋭く心を刺す声。臆病ゆえに胸を掴む言葉、表情、動き。まだまだ覚醒前ではあるが、新山詩織にはそれがあった。計算でも演技でもない、剥き出しで戦える音楽が。

<思ったことをそのまま歌詞に書いて歌っていけたら>

 この日が人生初のバンドライブだったという彼女は、静寂の中でひとり語り始める。「バンドでライブをやるのは、今日が初めてです。私は「高校に入ったら必ずバンドは組めるものなんだろう」と勝手に思ってました。でも高校に入ったら軽音楽部もなくて、誰か友達を誘うにも誘えないで……バンドは組めなかったので、ずっと家で何でもいいからとにかく歌って、歌って、ずっと歌って。で、今、こうやって本当に一番自分がやりたかったこと。自分の大好きなライブハウスで、バンドで歌っていられることが幸せです」

 「音楽活動を始めるようになってからは、周りの人とのコミュニケーションの取り方とかも、すごく安心できるようになったし、自分でも…………今だと前の、すごく弱かった自分が、ものすごく遠く……感じるようになりました。でもやっぱり前の、人と上手く話せなかったり、周りを気にし過ぎて疲れ過ぎたり。そんな自分があったから今こうやって音楽をやれて、強くなれてきたと思うので、前の自分も見捨てないように。これからも今しか書けない、思ったことをそのまま歌詞に書いて歌っていけたらいいなと思います」

◎新山詩織 終演後インタビュー

 痛々しいほど純粋に話す彼女の姿もまた、見る者を釘付けにした。誰も笑わない、音も立てない。ただただ懸命に発信される言葉に耳を傾ける。そんな無名の新人ながら本物の匂いを漂わす彼女が、終演後に話を聞かせてくれた。

--人生初のバンドライブ。いかがでした?
新山詩織:当たり前だけど、独りでやるのと全く違う。自分は新山詩織という独りだけど、今日はバンドの中でのギターボーカルとしてやったつもりです。すごく気持ち良かったです。

--高校入ったらバンドは勝手に組めるものだと思っていたのに……と仰っていましたが、そもそもバンドを組みたいと思ったきっかけって何だったの?
新山詩織:中1から軽音部に入って、早くからバンドの楽しみを感じちゃったから……このまま自分でバンドを組みたいとずっと思っていたんですけど、高校入ったらあからさまに“音楽大好き”みたいな人がそんなに居なくて、自分から話を聞きにいく勇気もなかったんで……悲しかった。

--でも今日、その夢が叶った訳ですよね。
新山詩織:(頷く)自分が一番やりたかったことだったから。まさかこんな形で叶うと思わなかったから、本当に幸せです。

--CDデビューに向けて様々な初めてを経験しているところだと思うんですけど、大変? それとも楽しい?
新山詩織:最初はいきなりいろんなことが入ってきたから、精神的にも本当にゴチャゴチャで壊れそうで。毎回大変だった時期はあったんですけど、最近は「ちょっとずつやっていこう」っていう風になれたから、すごく気持ちを落ち着けながら楽しくやれてます。

--「弱かった自分を遠く感じるようになった」とも言っていましたが、なんで変われたんだと思いますか?
新山詩織:………………音楽を通して。音楽をやっていたから。

---今年の春には1stシングルがリリースされます。どんな気分ですか?
新山詩織:自分の曲が全国に届けられると思うと……どんな風に聴かれるんだろうと思うんですけど、でもちょっと安心してる部分もあって。やっぱり自分の音楽に共感してくれる人はいると思うから、しっかり耳に届くといいな。

--どんなアーティスト、歌い手になっていきたいと思いますか?
新山詩織:代弁するとか、あからさまに背中を押すとかじゃなくて……ただ隣にいるだけ。自分が誰か周りに居るだけで安心できるから、そんな人になれたらいいです。

取材&テキスト:平賀哲雄